「労使で取り組む『働き方改革』&ダイバーシティ」
本日は、オブザーバー・事務局あわせて20名が参加。今回のテーマが〝労使で取り組む″ということから、参加者の大半が労働組合の方で、男女の参加数もほぼ半々でした。
今回の研究会は2部構成で行いました。
【第1部】 主宰者 植田による事前アンケートの分析結果報告&ミニ講義
【第2部】 事例発表 UAゼンセン流通部門 執行役員 宮島佳子氏
*事前アンケートより*(回答数:18名)
労働組合の3役(委員長、副委員長、書記長)に女性がいるかとの問いに、「いる」と回答したのは35%でした。一方で、「ずっといない」が47%と半数近くにのぼり、まだまだ男性社会であることが垣間見えました。労働組合3役の昭和企業戦士度・イクボス度については、企業戦士度が高い・やや高いあわせて31%、イクボス度が高い・やや高いあわせて25%、どちらともいえない25%との結果で、イクボス3役が一定数いることがわかります。また、労働組合執行委員のワーキングマザーがここ3年で増えているかとの問いでは、23%が増えている(増えている6%、少し増えている17%)と回答しているものの、6割近くが「変わらない」との回答でした。この「変わらない」には、以前からある程度ワーキングマザーの執行委員がいるがここ3年では人数が変わっていない場合と、ほぼいないまま変わらない場合が考えられますが、フリー記述を拝見する限り後者が多いようです(執行委員に子供がいる女性がいない、育児を抱える女性は終業後や休日出勤が難しく参画が難しいなど)。同様の問い、イクメン執行委員の人数がここ3年で増えているかについては、53%が増えていると回答(増えている12%、少し増えている41%)。執行委員のメンバーが若返っている、子育て世代が増えているなどのコメントからも、労働組合で着実にイクメン男性が増えていることがわかります。続く労働組合組織の体質についての問いで、44%がダイバーシティ型(ややダイバーシティ型38%、ダイバーシティ型6%)と回答していることからも、世代交代が進んできており昭和軍隊型から変わりつつあることがうかがえます。
一方で、現在の労働組合の体質や体制に問題や課題を感じるかとの問いでは、75%が何らかの問題ありと感じていました(感じる44%、少し感じる31%)。
ここから先の問いは、今次研究会テーマの本題です。
労働組合が「働き方改革」&ダイバーシティの取り組みに積極的かどうかについて、7割近くが積極的・やや積極的と回答していたのは納得でした。一方で、消極的との回答がまだ20%もあることに主宰者の植田は注目していました(やや消極的13%、消極的7%)。取り組みに対する組合員の反応としては、わからないが40%で最も多く、取り組みの浸透には時間がかかりそうです。「働き方改革」&ダイバーシティの取り組みを労使で協力して実施しているのは60%と高く、労使協議会の議題に入れたり、プロジェクトや委員会の設置などで取り組みを進めているようです。労使協力しての「働き方改革」&ダイバーシティの取り組みについて問題、課題があると回答したのは69%でした。自由記述のなかには、会社が本当の意味での働き方改革を推進しようとしているかがわからないとの回答もありました。実際、経営層・管理職の中には「労働時間を減らしたら業績が落ちるのではないか」と思っている人がまだ一定数いると聞きます。このような企業では、組合側からの働きかけが重要になりそうです。
*グループ内での共有*
アンケート結果や主宰者・植田のミニ講義を踏まえて、1グループ4名の中で各社の状況を紹介しあいました。ある労働組合では、もう20年以上女性の執行委員がいないため、今後いかに女性に参画してもらうかが課題といい、またある労働組合では、地域によって差があり首都圏には女性がいないとのことでした。一方で、比較的女性の執行委員が多いという労働組合に話を聞くと、若い世代の従業員が男女半々ということと、積極的に女性に組合活動の参画を促していることがわかりました。自組織がダイバーシティ型か昭和な軍隊型かという話では、昭和を引きずっているとの話で盛り上がりました。完全なピラミッド型組織ではなくなっているものの、やはり経営トップの意向をうかがいながら仕事を進めなければならないとの声もありました。また、管理職のマネジメントに関する話も出ました。国籍、性別、年代、価値観などの異なるメンバーをいかにマネジメントして成果を出すか、人を育てるか、取り組む課題が尽きないことをあらためて認識する時間になりました。
*事例発表*
UAゼンセン 流通部門 執行委員 宮島佳子さんからは、~労働組合の働き方改革は、なぜ進まないのか~、という副題をいただき、「労働組合役員の”働き方”の実態」、「労働組合が直面する組織構造の変化」、「ダイバーシティの必要性」という3つのテーマでお話いただきました。宮島さんは、数年間、企業労働組合の専従と産別の専従という2つの立場で活動を続けてきましたが、UAゼンセンでの運動を通じて社会を変えたいという意思のもと、昨年の秋に会社を退職し労働運動に注力することを決断致しました。
UAゼンセンは、製造産業部門、流通部門、総合サービス部門と多種多様な産業が参加する国内最大の産業別労働組合組織です。組合員の男女別割合は、男性40.4%、女性59.6%、雇用形態割合は、正社員組合員43.8%、短時間組合員56.2%と、”女性の短時間組合員”が多い組織ながら、労働組合は男性役員中心の軍隊型組織で、宮島さんの”ひげが生えそうな毎日”という言葉に、参加者の方も深く共鳴してうなずいていらっしゃいました。また、 集会の場面で発せられる「かけあいコール」や「ガンバロー三唱」は、女性から見ると気恥ずかしさが感じられるものの、男性にとっては仲間意識が高まる楽しいセレモニーとなっているというお話から、古くから継承されてきた文化や風土が色濃く残っていると感じられました。
「労働組合役員の”働き方”の実態」としては、夜を徹して闘って、皆を疲れ果てさせて、最後まで粘れた人だけ交渉成立、というような交渉スタイルや、残業に加え休日も返上して組合活動を優先する、というような自己犠牲的精神が依然として存在しているそうです。参加者のある方のお話では、組合専従になった途端に深夜帰宅が当たり前となり、家庭崩壊の危機を感じて業務の見直しを行ったということですが、引き継ぎ、引き継ぎで継承されてきた文化的なものを急に断ち切るわけにもいかず、まだまだ問題は山積みとのことでした。このような実態から、労働組合の役員になることは大変な役割を担うことだという認識を組合員の方が持たれており、いかに次世代の役員を育成するかということが、労働組合の大きな課題となっているそうです。そのためには、文化や風土を変える意識改革として、役員の方々がご自身の働き方を見直すと共に組合員の方々と密にコミュニケーションをとることが重要であるというお話を伺い、現職の皆さんが活き活きとやりがいを持って活動するその姿こそが、次世代の育成に大きな影響を与えるのだと確信しました。
「労働組合が直面する組織構造の変化」のなかでは、これまでの労働条件は、介護、育児、家事をケアする必要のない”ケアレス男性”がモデルとなって作られている一方で、UAゼンセン流通部門では、現在過半数を占める”女性の短時間組合員=パートタイマー”の待遇、処遇の改善がについて積極的に進められていることがわかりました。事例としては、パートタイマーが労使協議会に参画することで、これまで無給だった慶弔休暇を有給にする制度を作り上げた例や、パートタイマーが組合活動に参加したことによって取り上げられた制服の変更例や、実務に活きるラッピング研修の実現などの例をご紹介いただきました。このような活動はパートタイマーだけでなく正社員にも良い影響を与え、現場の生の声が反映されることで、定着率や生産性の向上に繋がっているとのことでした。
「ダイバーシティの必要性」では、UAゼンセンにおける男女共同参画社会実現の3本柱として、①職場における男女平等の推進、②ワーク・ライフ・バランスの実現、③労働組合における男女共同参画の推進をご紹介いただきました。男女を問わず誰もがいきいきと働くことができる職場作りとは、それぞれが力を発揮し公正に評価される職場の実現や、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方を選択できる職場の実現となります。その実現のためにこそ、組合員の声の代表として労働組合がありますが、現在の男性中心の組合では女性の声が届かず、だからこそ労働組合における男女共同参画が必要不可欠であるとのことでした。行動計画を作成するにあたっては、自組織の特徴をとらえ、トップの意思表明に”意思”が反映されているか、拾うべき声を拾い「質」を充実させる内容になっているかに留意し、計画を作っただけで終わらぬようしっかり確認して行動する仕組み作りの必要性が強調されました。
最後に宮島さん自身が労働組合役員として心がけていることとして「軸を持つ、遠慮しない、おかしいものはおかしいと言う」というスタンス、女性目線で仕事してと言われた時には、
女性ならではの気づきや「感性」と人を見守り育てる「母性」と受け止めること 、自分だけでやろうとせず「周りを巻き込む働きかけ」の必要性をお話しいただきました。全体を通じて、男性、女性、雇用形態に関わらず、全ての人々が活躍できる社会を作りたいという宮島さんの熱い思いが伝わる発表でした。
宮島さま、どうもありがとうございました。
次回の研究会は、第4回「ダイバーシティ組織をリードするワーキングマザーから学ぶ『働き方改革』」と題して、2017年9月12日(火)に開催致します。皆様の参加をお待ちしておりますので、引き続きどうぞよろしくお願い致します。
文責:株式会社日経BPマーケティング 神田絵梨、キャリアコンサルタント 山岡正子