事例発表
株式会社ビット 営業管理本部 業務部 部長
宮本 由美子様
自己紹介
株式会社ビットというソフトウェア開発の会社に勤めており、管理部門の責任者をしています。資格ではキャリアコンサルタント、中小企業診断士の資格を持っており、診断士として
健康経営プロジェクト研究会に所属をして自社だけでなく他社様にも健康経営が導入できるように今勉強をしています。今日は私の健康フローチャートでキャリアを少しご紹介します。大学卒業後は、外資系の不動産会社に入社をし、不動産鑑定士の試験にも合格して、順風に仕事をしていました。ところが主人が沖縄に転勤になり、私自身が沖縄に行きたいなっていうふうに思ったいということもあり、会社を辞めて沖縄に引っ越しをしました。その際、主人が病気になり、この時は、人の健康は本当に重要だというのをすごく実感をしました。その後、神奈川に戻りましたが、主人の病気もあり、正社員の道を諦めて、自宅の近くの会社でパート勤務することになりましたが、お給料をもらえても楽しくもないし、モチベーションが上がらないような感じでした。その後、
鎌倉の占い師がヤフーの占いサイトへ出店する際、手伝ってくれないかということで声がかかり、占い師の助手3年間やらせていただきました。すごく仕事は楽しかったのですが、占い師の先生が海外に行ってしまったので、仕事がなくなりました。ちょうどその時は子供が小学生になったので正社員の道に戻りたいと思いましたが、なかなか、採用してくれるところがなく、近くの会社に経理のパートで入り、人事的な仕事にもつくようになりました。その後、社会福祉法人に入ってここからは完全に人事の仕事を担当するようになり、採用、給与、人事考課制度の設計等を担当しました。引っ越しを機に今の会社に入社してからはキャリアコンコンサルタント、中小企業診断士の資格を取得し、2021年7月の代表交代を機に、健康経営という新しい取り組みを実施しました。社会的健康をどうやって保っていくのかっていうのは
健康経営を実施しながらも改めて自分自身その重要性を感じている今日この頃です。
会社の紹介
創業が1989年平成元年創業の株式会社ビットという会社です。今年度4月1日付で73名グループ全体では100名を超える企業で、横浜のみなとみらいにあります。 IT業でいわゆる受託型のソフトウェア開発をやっている会社です。完全な独立系で、BtoBの仕事をしています。健康経営を始めた際、システム会社らしく働き方改革に資するようなアプリを作ろうということで、得意なOCRのエンジンを生かして、AI-OCRの製品を開発しました。
平均年齢37歳 平均勤続年数が8.7年、男女比は男性が8割超で女性はずっと2割未満です。年齢別の構成は比較的システム会社にしては20代30代が多く、50以上が少ない、ただ中小企業
にとってですね60歳超えてもエンジニアはとても貴重なので定年再雇用が65歳で終わってもさらに雇用し続けた実績があります。
健康経営に取り組む背景
私が入社した2016年はエンジニアが当時、全員客先常駐という形で新人歓迎会と忘年会しか帰社しないというような状況でした。社員が他の社員を知らないそんな状況で経営も安定しない、そんな課題がありました。私が入社してからまず実施したのが社員を知らなきゃ始まらないので、全員こちらから出向いて社員一人一人と面談して知っていくということでした。そのほか、人事考課制度を再構築したり体系的な研修制度を導入したり、システムの力を借りながら会社のポータルサイトの構築やチャットの導入などコミュニケーションの促進にも力をいれました。ですが、2016年以降、毎年行っている社員満足度調査は2016年から2020年まで5年間、3.6 から3.8ぐらいを行ったりきたりしているというような状況で、劇的な効果がなかったというのが2020年までの現状です。ところが、2021年の7月に代表が交代になり、その際発表された中期経営計画を達成するための人員計画をたてたところ、当時の従業員の3倍の人員が必要なことがわかりました。そのための採用計画をたてましたが、中小企業はそんなに採用にお金をかけられるわけではなく、かつ採用コストをかけたからといって採用できる保障なんて何もない。しかも1人採用しても既存の社員が辞めてしまったら生産性をもうマイナスになってしまう。じゃあ 社員が辞めない会社作りをしていく方が
先決じゃないですかということで、代表に提案したのが健康経営でした。健康経営っていうのは 従業員の健康に投資をして業績向上につなげていくというものですけれども当社の場合はただ辞めない会社作りをしただけでは業績向上に繋がらない。代表と経営陣と話し合った結果、基本方針として、やりがいを持って続けられる活力のある生産性の高い働き方の創出に努める。それを目的として
健康経営を導入していきました。まず、代表が直接社員に 健康経営やりますよっていうのをオンラインで配信しました。2021年9月の3日にトップメッセージとして、先ほどの中期経営計画と一緒に健康経営をうちでやっていきますよというのを直接発信しています。従業員とその家族を大切にしたいというのを直接言葉で代表が伝えて経営者と従業員が一体となって健康維持増進に取り組もうというのを伝えました。
健康経営とは
健康経営というのはこの従業員の健康を経営的視点から考えるというのが特徴でそこにお金を戦略的に投資していきましょうというもので、まず企業理念が土台にあってその上に従業員の健康に投資をしていくと、組織が活性化したりワークライフバランスによって人材が定着したりイノベーションが活性促進されたり、そんな効果が最終的に、業績向上や企業価値の向上につながりますよというものです。
具体的な内容は各社それぞれで例えば禁煙の取り組み、スポーツジムを会社で契約、健康に配慮したお弁当を出す等、様々あります。その会社にあったやり方で健康にお金を出すことを投資と考えて実践していきます。じゃぁ健康って何っていうとWHOの定義で身体的精神的社会的健康というのがあって、単に体や心が病気でないことがイコール健康ではないよということでこの社会的健康というのがすごく重要です。社会の中に自分の居場所があるという風に感じられる状態、生きがいだとか働きがいが感じられる状態それが社会的な健康です。
従業員がやりがいを持って働ける状態というのを会社が目指すということはこの社会的な健康に位置づけられると思います。
国は守りの健康経営と攻めの健康経営という2種類あり、守りの健康経営っていうのは単なるコストと見る考え方で、攻めの健康経営というのは経営戦略の中で投資として行うものと言っています。
ただ、うちでは守りと攻めの健康経営を次のように考えます。まず守りの健康経営というのは、すでに体調不良でお休みをしていたり、メンタル不調や花粉症などで何らかの失敗がもうパフォーマンスが
すでに低下したりしている状態で、このパフォーマンスが 低下している人たちに対して投資をしていくこれを守りの健康経営と考えます。病気になった人たちやメンタル不調の人たちが辞めなくていい会社を目指すこれが守りの健康経営。復職しやすい制度を考えるとか、休みを取りやすい環境を整えるとかそれを当社では守りの健康経営と考えます。
そうではなくて、プライベートでも仕事でも何らか悩みがあってモチベーションが低下低迷しているとかやる気が出ないとかそういう人たちに対して、充実感を持って働いてもらう、やりがいを持って働くための取り組みをするこれを攻めの健康経営といいます。攻めの健康経営によって働きがいのある会社にしていくそれが当社の健康経営だと思っています。
健康経営の攻めの取り組み
当社の具体的な健康経営の取組みの初めに健康習慣アンケートというのを実施しました。回答率も66名中61名が回答、アンケートの実施後のフィードバックセミナーも参加者が50名と非常に参加率が高かったので、関心が高かったと思います。 社員が「会社が変わりそうだな」と感じ始めたのがこの頃かなと思います。
そのセミナーの後に健康経営プロジェクトのメンバーを募集し、集まってくれた10名で健康経営をスタートします。新入社員、外国籍の社員、ママさんエンジニア、役員も入り、女性は4割とダイバーシティを感じるようなメンバー構成になりました。
キックオフでは、全員が発言する機会というのを設けるようなプログラムにしました。その最大の仕掛けがこのカードゲームです。 みんなが持っているリソースカードを使って職場の活性化のためにどうこのリソース使っていきますかというものです。カードゲームで全員がなんでも発言できる雰囲気づくりをして、最後に「具体的にビットで何やっていきますか」という提案をしていく時間に移っていき、実際にワークライフバランスグループ、部活・サークルグループ、健康診断再検診費用補助チームグループができ、毎月1回オンラインで定例会を実施しています。
定例会を毎月開催し、初年度ですね取り組んだ結果、多くの取り組み内容が実施されています。最初に時間単位の年休制度が導入されました。ママさんエンジニア2人が提案してくれて子供を病院に連れて行く時に時間単位の年休制度が欲しいということで実際に提案されて導入に至りました。自分たちのライフスタイルに合わせて取得している人が多く、これはすごく働きがいにつながっているという印象を持っています。ほかにもいろんな提案が実施されましたがこれは攻めの健康経営です。同時に守りの健康経営として私の方で例えば心の健康づくり計画を策定したり、メンタルヘルスセミナーを開催したり、そういう守りの健康経営も並行で進めていきます。
ちょっと写真で紹介すると、ボウリング大会も2回やりました。ワーケーションも実施して北海道美唄市に6泊7日で6名参加しています。あとは健康セミナーですね、これも2週連続でやりました。これは健康診断再検診費用補助チームが企画してくれた健康セミナーで、チームリーダーが癌を 経験した方なんですね。最初要再検査になった時に大丈夫だろうと思って再検診に行かなかったそうなんですが、2年目に要再検査で病院を受診したところをがんが進行していて手術になったという経験をもとにこのチームが出来上がっています。その彼女が再検査の大切さというのを訴えてくれているんですが、ただ再検査の費用を会社に補助してもらうっていうのをお願いする前に、結局健康診断の再検査になるのは生活習慣病が多いので、社員一人一人が健康になる努力をすることでまず再検査になる人の比率を下げた後にそれでも再検査の人にはゆくゆく会社が費用を補助してねっていうような目的を持って取り組んでいます。
このような取り組みを実施して、どのように会社が変化してきたかというと、初年度実施した健康習慣アンケートを2年目にも実施しました。働き方の要望では「従業員個々の事情に合わせた時短勤務や時差出勤などの多様化」の項目は非常にポイントが下がっていて、これは時間単位の年休制度を入れたので従業員個々の事情に合わせて取得してもらえるのかなというようなのが見て取れます。また、健康習慣アンケートとは別に
先にご紹介した社員満足度調査では、健康経営を導入したあとの2021年12月の満足度調査では満足度がかなり上がっています。あまりにあがって翌年が怖かったのですが、翌年2022年12月の調査でもさらに平均スコアが上がりました。これは確実に健康経営の効果があったなと思う結果です。
社員満足度調査の項目は、健康とは関係ないので例えばビットの成長性収益性安定性に満足しているかとか社員にとってうちは賞賛される職場だと思うかとかそういう項目がありますが、その項目も平均スコアが上がっています。
こんな風に社員のワークエンゲージメントが高まってきています。
実はこの健康経営っていうのは国とか都道府県とか自治体が認証制度を設けています。当社が健康経営を始めた当初私は健康経営の認証の申請はしないと断言してました。なぜかというと、認証を取ることを目的にしてしまうとやりたいことに制限が出たり、社員がやりたいことではなくて認証を取るための取組といのが優先されてしまうので、だから申請はしないから社員がやりたいことをやろうっていうふうに断言していました。ただ結果的に取り組み始めるとその認証項目を満たしてきていたので、外部の方からビットさんすごいよ絶対認証取れるよと言われると欲が出てきてしまい、認証を取ろうかなと思ってしまいました。しかもプロジェクトメンバーが、すごくいい取り組みをしてくれているので、認証はご褒美じゃないんですけど、みんなにその認証を取ることで「みんなにありがとう」って言ってあげたくなったんです。それでうちの部署に協力してもらって
国の認証と横浜市の認証を申請し結果的に国も横浜市もダブル受賞という形で、かつまさかの健康経営優良法人ブライト500というのを受賞
しました。このブライト500というのはこの2023の優良法人に選ばれた中小規模法人部門の1万4012法人の中で、さらに優れた取り組みをする上位500企業に渡されるもので、それを受賞することができました。やはり国の認証を取る方が圧倒的に知名度が上がりました。
更なる攻めの健康経営実現のために~セルフキャリアドックの導入
今年度は更なる攻めの健康経営実現に向けて、「セルフキャリアドッグ」というのを導入していきます。セルフキャリアドックというのは、キャリア研修とキャリアカウンセリングとセットで実施していくものです。社員一人一人が自分で主体的に自分の今後のキャリアを考えていくという機会ですが、いままではうちの社員は無関心層が多く、自分のキャリアを考えるってことの重要性を心底理解してもらって腹落ちをしないとこのセルフキャリアドックを導入しても本当に主体的にキャリア形成について考えるのは難しいんじゃないかなっていうふうに思っていました。しかし、健康経営を導入したことで社員が自分自身の健康への意識というのが向上して自分に無関心だった社員が健康に生きることっていうことに少しずつですけれども意識を向けるようになってきています。そして、何よりもうちの会社の健康経営を通じて今ここにいる、今うちの会社にいるっていう事に意義を感じてくれている社員が多くなっています。ワークエンゲージメントが少しずつですが、高まっている中で一気に攻めの健康経営としてこのセルフキャリアドッグを導入していきます。キャリア研修の中ではこの組織と自分たちが対等な関係の中でどう自分のキャリアを描いていくのかということと、その描いたキャリアについてさらに会社の中でのエンゲージメントという観点で見つめてもらいます。そのキャリアがうまくいかなかった時に自分がどういう思考に落ちるのかそこからどういう風に回復していくのかそういうことを、キャリアカウンセリングを通じて一緒に考えていきたいと思います。
健康経営を通じ、今うちの経営陣は社員一人一人のキャリアに耳を傾けるという姿勢を持っています。健康経営を推進するある社長が「他の会社で実現できてうちの会社で実現でき
ないことがあったらぜひ行ってほしい、それがうちで本当に実現できないものだったら他の会社に行くしかない、でもうちで実現できるんだったらぜひそれをうちに取り入れればいい」と。今当社の経営陣もそういう考えです。社員が自分のキャリアも含めてお互いに自分
をオープンにしてお互いが尊重して認め合うというような風土ができつつありますし、それがちょっと今日ご説明した社会的な健康じゃないかなというふうに思っています。そういった組織風土だとか組織改革をしていくのが私たち人事の仕事だと思いながらやっております。
健康経営は焚き火のような活動と言われています。一気に火を燃やそうとしても消えてしまう。湿った薪に火をつけても消えてしまう。乾いた薪に火をつけることで少しずつ火が広がって燃え盛る火になっていく。当社だけではまだまだ取り組みが小さいですが、業種とか地域を超えてこれを実施する企業と連携していくことで、こう輪が広がってさらに生産性の高い会社が実現できるのではないかというふうに思っています。是非、私自身他社様と健康経営を通じた情報交換をさせていただきたいなと思っています。
発表は以上とさせていただきます本日はご静聴ありがとうございました。
(文責 昌宅由美子)