令和時代だからこそ50代半ば熟年世代のキャリア支援が必須!

~バブル世代が『昇華』するための内省と意識転換、2社の事例から考えてみよう!~

 

2社事例の1社目は、『50代キャリア研修とキャリアカウンセリング』をテーマに、さくら情報システム株式会社 人事部キャリア開発センター チーフアドバイザー 高久和男氏よりご講演いただきました。

 

 昨年11月に創立50周年を迎えたさくら情報システムは、さくら銀行(現三井住友銀行)のシステム関連会社で、従業員数1,117名、男性758名、女性359名、平均年齢44.1歳の会社です。そもそも中高年を対象にしたキャリア研修が始まったのが、10年前の2013年になります。その年一番多くを占めた年齢が45歳でした。55歳で役職定年制を導入していた同社は、年収が下がってもこのまま働き続けるのか、今と同様な年収がもらえる企業に転職するのか、今後のキャリアを見つめてもらうために45歳を対象にした研修を開始しました。そして、初回の45歳研修受講者が50歳になった2018年から、50代を対象とした研修が始まりました。現在では45歳と50代の二本柱で、キャリア研修を実施しています。

★指名式から手上げ式へ

2018年の初年度は年齢が50歳になる人全員を対象として実施しましたが、翌年からは50代の手上げ式に変更し、初年度には実施していなかったキャリア面談をセットにすることにしました。その変更に至った経緯ですが、まず、研修を指名式から手上げ式に変更した理由は

   50歳ちょうどの年齢は結構モチベーションが高い・・・(気持ちはまだまだ40)

   そのうちに人事制度の見直しがあるかもしれない・・・(淡い期待)

   役職定年にまだ5年もある・・・(まだ自分事として考えられない)

という印象が、受講者にあったからです。そこで、

   仕事やプライベート、人生全般で悩み・迷い・不安・戸惑いがある

   自分の人生のキャリアビジョン、ライフビジョンを模索している

   モチベーションを上げたいと思っている

   イキイキと働き続けたいと思っている

50歳以上の人は是非研修に申し込んでくださいと、社内ポータルで呼びかけることにしました。しかしながら元々大人しい人が多い社風のせいか、エントリー状況が芳しくなかったので、55歳、56歳、57歳・・・と年齢を区切ってBCCメールを送ることにしました (仲間内では「標的型攻撃メール」と揶揄されていたそうです)。メールを受取った人は自分事としてとらえてくれたのか、エントリーする人が増えてきたので、この試みはとてもいい働きかけ方だったと思っています。

 

★キャリア面談付き研修へ

 研修を受講した人の感想に、「これからの働き方を考えなくてはいけないということはわかったけど、じゃあ自分は何をすればいいのか、もっと具体的な話しが聞きたかった」という声がありました。そこで研修講師(キャリアコンサルタントの有資格者)によるキャリア面談を、研修後の1か月後に実施して受講生の内省を深めてもらうことにしました。この面談に人事部は一切関知していないので、どのような面談内容だったのかは把握していません。真剣なキャリア相談から雑談まで、面談の中身は色々あるようです。

面談を受診した人の感想は

   何も話すことがないと思っていたけど、色々と話すことができてよかった。

   30分があっという間だった。

   毎年定期的に面談を受けたい。

など、高評価を得ています。さらに

   自分は具体的に何をすればいいのか、わかってきた

   自分の考えが間違っていなかったことに確信が持てた

と前向きにとらえている方が多くいました。

 

★キャリア研修とキャリア面談

多くの中高年を対象としたキャリア研修は

5年後・10年後、どんな「ありたい自分」を描きますか?

●その「ありたい自分」を実現するために、今から何をしますか?

と自分に問いかけるものが多いです。しかし、なかなか自分の未来図を描ける人は少ないのではないでしょうか。研修を受講しても、「ありたい自分」のイメージができないと、その実現は難しいと思います。しかし、キャリア面談を受けることで

●「ありたい自分」を実現するためのアクションプランがさらに深まる

●「ありたい自分」の障害となっている個人的な課題や悩みについて相談できる

など、より具体的なイメージが膨らんでくるのではないかと考えています。

 

★今後の課題

   研修は指名式か手上げ式か

   面談は継続するか否か 継続する場合受講者必須とするか任意とするか

この2つの課題に対してさくら情報システムは、研修は手上げ式面談は受講者必須、という形にこだわりたいと思っています。

研修はあくまでも受講者の自主性を尊重したいですし、キャリア面談は希望者のみにしていましたが、研修効果を高めてもらうために必須に戻したいと思っています。近い将来70歳までの雇用延長が義務化されるでしょう。ますます増えていく中高年社員向け研修は、重要な施策になっていくと思います。

2部はホシザキ株式会社、杉江宏之さん、坪井加寿代さん(すぎちゃん、つぼちゃんコンビ)に「55歳向けキャリアデザイン(ゴールド人財)研修」についてお話いただきました。

 

1.会社紹介と自己紹介

●会社紹介

ペンギンマークを色々なところで見かけると思いますが、ホシザキ株式会社は業務用の厨房機器を製造販売している会社です。

会社は愛知県の豊明市にあり、今年で創業設立76年目、長い歴史を持っています。事業内容としては業務用の厨房機器と製氷機、大きな冷蔵庫、食器洗浄機等フードサービス機器、最近は、飲食関係以外の分野の基礎研究も盛んに実施しており、例えば農業や造園業向けの機器開発、少し前のコロナの時でしたら 除菌水生成装置等、研究開発しているところです。 従業員は連結で13,000人超え、単体で1200人超え、グループとしては55社国内外にあります。

私たちが所属する人事部は18名。人材組織開発課、人事課、ダイバーシティ推進センターで構成されており、横串であれをやりたい、これをやりたい、とみんな協力しあって仕事をやっています。みんなに元気に笑顔とイキイキして働いてほしいそんな思いで みんなの応援団をしています。社内の身近な人事部を目指して社員が働きがい向上へ向けて今頑張っている最中です。

 

●自己紹介(すぎちゃん)

意識チャートに沿って自己紹介いたします。エンジニアとして入社し、20代の頃は、とにかく仕事も遊びももうイケイケとどんどんの楽しい時代を過ごしておりました。一例を挙げますと、 千葉の巨大テーマパークに飲料用の氷を作る製氷機を、パレードが終わる時間から夜中に働き、2週間で開発して作って収めました。ドリンクを飲まれたとき、氷が入っていたら私を思い出してください。また、名古屋港水族館の寒いガラス張りの水槽の中でペンギンたちに囲まれながら一緒に製氷機を開発しました。遊びは、映画『私をスキーにつれてって』を見ていただければ雰囲気わかります。そんな絶好調の最中に突然の海外転勤命令が出て、ズドーンと1回目の落ち込みです。かなり、凹みましたが、 アメリカ人の若い技術者たちが育っていくことが、本当に喜びでした。やはりアメリカですので本物のダイバーシティ、ワークライフバランスというものを実体験しながら人生と会社との関係について、アメリカ人からずいぶん学びました。アメリカ向けの製氷機を開発し、アメリカで製造販売するという絶好調な時代をアメリカで過ごしましたが、 突然の帰国命令が出ました。 と同時に、あるいわくつきの職場に配置転換になったのです。2回目の落ち込みです。当時は、まだ、パワハラという言葉がなかったのですが、連日のパワハラに耐えながら仕事をしてきました。パワハラに耐え、ハイハイ言われたことだけ仕事をしていると、なぜかあっという間に部長まで昇進していくのです。そんなパワハラ職場も長く続くわけはなく、間もなく解散になり、降格もしました。

今度は技術企画という仕事に就き、 海外の巨大企業例えば、あの超有名なハンバーガーメーカーとかベルギーのビールメーカーに技術力でホシザキを売り込む仕事をやらせていただきました。またイケイケどんどんの絶好調が続き、栄養ドリンクと同じ、24時間働くジャパニーズビジネスマンをやっていました。絶好調のさなか、今度は、なぜか人事部へ異動となりました。3回目の落ち込みです。さすがに人事部ということで違和感がありました。でも、これは、何か神様からお役目を指示されたのでしょう。何の因果かわからないですが、過去実体験してきた人材育成や、パワハラ防止とか、ダイバーシティに関係する仕事をさせていただきました。また、イケイケどんどん時代が到来しましたが、今度は、突然の管理職を降職になりました。これはかなり凹みました。ですが、あるきっかけを機に今ではうなぎ上りになっております。今は、会社に来るのが、もう、楽しくて仕方がないのです。何があったかと言いますと実は、つぼちゃんから紹介されたゴールド人財という研修です。 後ほど、なぜこのゴールド人財が必要と思ったか報告させていただきます。

 

2. 当社が55歳研修を実施する背景 (階層別キャリア研修を実施する背景)

人事部としてはシニアベテラン 社員のいきいき度は職場の雰囲気に影響するとこのように捉えています。当社はまだ役職定年制度もあり、定年後65までは再雇用で延長ができるという中、色々なことが起きています。会社の年齢構成は、40代後半から60代のところが非常に層が厚くその下がガクっと減っており、いびつな年齢構成の中で 良くも悪くも50代の方たちも55歳も超えてくると会社職場からは一目置かれる立場になっています。若手も全く途切れるわけではなくポツポツと入ってくるので、ジェネレーションギャップも生まれています。お互い何を話してよいかわからない状況もあり、この道一筋で来ていて俺流が変化できない人もいます。とはいえ、会社にとっても大事な職場にとっても大事な方たちなので、こういった機会を55歳時の研修機会を作ることで、緩やかに自分たちの役割の変化を受け入れ、シフトチェンジをしてほしいと思っています。それを応援するという思いで キャリアデザイン研修を55歳で実施しており、必須にしています。

実施する理由は大きく3つあり、まず1つ目は、ほとんどが工場現場で働く方たちなので自分たちで参加したいと手を挙げて現場を抜ける事ができない。年間でこの時期にやりますと、あらかじめ会社のルーティーンにしてしまわないと人を抜けない。2つ目は、入社以来研修には全く縁がない方たちがいること。研修という言葉に対して アレルギーもあるような方たちなので今回のキャリア研修でも初めてだよって方も結構います。そういう方達素直な方が多いので「会社のルールで決め事です」と言うとちゃんと参加してくれる。3つ目はそういう渋々参加している人たちに楽しく帰ってもらおうとすると、会話がある程度合う同じ年齢が参加すると話題も合いやすいし、同期と何十年かぶりに会話しという方もいらっしゃる。そういった3つの 理由で必須にしています。

研修に参加して、シニア層のエンゲージメントが高まれば 社員全体のエンゲージメントの向上につながる、若い人のロールモデルになってくれるのではないかと、密かにすぎちゃん、つぼちゃんで画策しています。

3.50代のキャリア支援 「ゴールド人財研修」の必要性

ここからは、私、すぎちゃんが、なぜゴールド人財研修が必要と思ったかを実体験を通して報告させていただきます。

   これまでのキャリア研修

これまでも、キャリア研修を実施してきたが、中身はキャリアの棚卸しであったり、自分の強みを知り仕事に生かすことや、老後のお金の話ばっかりだったのです。テーマとしては悪くはないし、受講後の評価も決して悪くなかった。では、どう働けばいいのとか?退職まで生き生きと働いてくださいと言われても、何をやらせてくれるのか?不安な声が聞こえてきました。そこで、マインドを元気にさせてくれるような研修はないかということで、模索していたところ、それが、Queさんのゴールド人財研修だったのです。

 

   研修事務局の願いと実体験

この研修を受講したすぎちゃんの実体験をお話しさせていただきます。

今までの働く信念とか思考は、出世して会社や職場を動かしたいと思っていました。出世して収入たっぷり遊びたい、飲みたい、成果を出して賞賛されたい。こういうマインドが強かったです。

24時間働けますか、ファイトと一発なんていうドリンクありましたよね。あれを本当に実践していました。

こんなマインドになったのは若い頃、ある刑事ドラマで、青島刑事が、室井管理官に「現場の俺たちが正しいことができるように偉くなってください」ってセリフありましたよね。正しいことをしたければ偉くなれってというメッセージと受け取り。私も偉くならねばあかんな、と思っちゃったんです。 更に、入社したころ、先輩や上司に、「いちいち聞くな!自分で考えて行動しろ!」っていつも言われてました。 それで仕事に対する信念と思考やマインドが完成してしまったのです。

 

ここで、ゴールド人財研修とは何かを一部を紹介します。研修に参加すると、まず、今までの働き方や、価値観のギャップに気づくはずです。それから、周りからすると、あなたは実は「困ったちゃん」になっているかもということがわかります。そして、自分はどんな人材かがわかります。ジンザイって3つあるんです。 財をなす人財。いるだけの人在。何もしない人罪です。

この財をなす人財になるためには、まず自分を知る。自分を燃えさせるものは何か「心のエンジン」がこの研修でわかるのです。 このゴールド人財を受けた私すぎちゃんはついに覚醒しました。

いわゆる私は『困ったちゃん』だったのです。なぜ、度重なる異動や昇格、降格、降職などがあったのか?ずっと上司や、環境が悪いと他責にしておりました。しかし、全部自分の行動の癖や、その当時の心のエンジンが招いていたのだ、と、いうことがわかりました。絶好調の時期は、上司への報告とか承認は、時間の無駄と思っていました。自分が良いと思うことや、正しいことを貫きたい、成果を出して目立ちたい、注目されたいという思考や行動の癖がわかりました。若いころに完成された、信念と思考の箍をはずすことができていなかったのです。

研修後何が起こったかというと心のアップデートをすることができました。

古い昭和、平成時代の仕事に対する信念と思考の箍がはずれ、皆さんからありがとうと言われる行動をするようにしました。 職場の成果を出すために働くことにしました。 自分の得意を発見し、生かして成果を出せそうな提案をして、会社に貢献していきたいと思えるようになりました。いままでの発生した事象や、紆余曲折な会社人生、パワハラや転勤、降職等いろいろありましたけど、すべて自分を成長させる助言であったと、認識できるようになり、すべての出会った方に対して感謝するようになりました。

シニア世代は、役割や環境変化に合わせた上手なシフトチェンジが必要だということが自分自身の実体験をもとに感じました。自分自身がアップデートできたし、このホシザキの中でも、55歳の社員、ベテランの方、悩める管理職に、ゴールド人財研修を受けていただきたいなと思いたったのが、採用のいきさつです。

 

   研修の手ごたえ

このゴールド人財研修の受講生の受講前は、いやいや感満載、遅刻や、パソコンとか携帯を覗き見しながらの参加、グループ内でも参加者同士の会話が全くなく、仕事が当然気になり、なんでこんな忙しい時期にこんな研修に参加しなければならないのかといった感じです。ですが、研修受講後は、みんなの顔見ればもうすぐわかります。楽しかったねといって、元気に職場へ戻っていきました。表情が研修前と全く違うのです。心のもやもや感が吹っ切れ、長年蓄積されてものを出し切った感がありました。普段、寡黙な人、特に職人さんがよくしゃべる。この人こんなに喋るのか!ていう位しゃべるのですね。皆さん自分自身の特性に興味を持てるようになりました。それから自分の心のエンジンは何かっていうのが知れたのと、あと自分の周りの人にも心のエンジンがあるのだよっていうのを知って、周りの方に対して興味がわくようになったと思われます。おおきな心の変化が起きたのだなとわかります。今後もこの55歳の人たち50代以上の人たちをイキイキ変身させるぞという意気込みで、このゴールド人財研修を継続的に実施していきたいと思っています。皆さん、ご清聴 ありがとうございました。感謝します。

事例発表後の質問タイムでは、「すぎちゃんのプレゼン力が素晴らしい!何かされていますか?」の質問に、実はすぎちゃんはユーチューバーだったことが判明。さらに、英語のプレゼンも学んでいるとのこと。

仕事以外でも自分磨きを続けて、「ゴールド人財」を体現しているすぎちゃんの素晴らしいお話を聞かせていただきました。すぎちゃん、つぼちゃんコンビのホシザキ愛が伝わってきた時間でした。

すぎちゃん、つぼちゃん、ありがとうございました。

 

(文責 昌宅 由美子)