2022年11月10日(木)【第27回】オンライン研究会は『女性活躍推進、障がい者、LCBT、グローバル・・・ダイバーシティ推進は終わりなき旅』~オムロン株式会社と私の20年、今、そして未来~と題し、オムロン株式会社グローバル人財総務センタ 企画室 ダイバーシティ&インクルージョン推進課 課長 上村千絵様にご講演いただきました。
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★ オムロンと私の20年
オムロンは創業89周年、京都市に本社を置き、グループ会社155社、事業展開120か国、制御機器事業を主軸に、社会システム事業などモノづくりの会社です。全社員の29,000人の日本時以外の比率は7割程度(上村さんが入社当時は5割)、海外売上が5割、海外株主比率5割と京都の会社から、グローバルな会社へと変貌しています。
創業者 立石一真「われわれの働きで 我々の生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」の社憲を、社員全員が毎朝、唱和し浸透させるだけでなく、企業理念として全社員が日々の事業判断の礎としています。世の中でパーパス経営が流行っていますが、はるか昔から、私たちの会社はそれを実行してきました。
〇がむしゃらに走り続けた10年(20代)
私は1992年にオムロンに一般職で入社して、初めて社憲を知りました。当時は、まだ結婚退職が当たり前の時代で、仕事の基礎を学ぶ面白さを感じた20代でしたが、担当する部品調達の仕事で部品逼迫による長時間労働で、肉体的にも精神的にもかなり厳しい実体験を経験したことで、仕事での難局をチームで乗り越えていける会社の仕組みや制度ができたらいいなと感じたことが、実は今の働き方を変えていきたいという原動力になっています。
〇ライフとワークに向き合う10年(30代)
30代、結婚後、仕事の面白さを本当に感じ始めた頃に妊娠しました。会社を続けられるだろうかと思った時に「辞める必要はないよ」と上司とパートナーに言われ、両親のサポートもあり仕事を続けることができました。また、30代後半で2人目の妊娠で産休・育休に入ることがわかっているのに「次の昇格試験を受けないか」と言われ、会社が何となく変わってきているかなと感じました。しかし当時は、人事部門の女性活躍の施策に対しては、「女性活躍っていったい何なの?」かなり批判的に見ていました。
〇自分のスタイルを築く10年(40代)
しかし、二人目の産休・育休から戻ったときに「ダイバーシティ推進」という新部署に異動となり、人事部門のど真ん中に入ることで、人事の方々の大変さを知りました。そして、それを現場で理解していない人が多いこと(私自身もそうだった)も知っていたので、人事の施策を現場の多くの人たちに理解をしてもらうことこそ、自分がやる仕事だと思いました。そこから、今まで自分がいいなと思うことをどんどん取り組みました。やりがいを感じていますが、総論OK各論NOなど、いろいろ苦労もあり、試行錯誤をしながら現在も取り組んでいます。また、この40代の時に、総合職に転換し、時短勤務のままマネージャーに昇格しました。二人の子育てをしながら、管理職として働いています。
そして、現在、50代に突入し、コロナ禍での在宅ワークの仕事スタイルを取り入れるとともに、家の改造(両親の介護を踏まえて)と趣味のガーデニングとまだまだ続く子育てと・・・自分自身の人生を大切にした働き方、生き方を心がけています。
★オムロングループのダイバーシティ&インクルージョン推進
オムロングループは、今年、「人が活きるオートメーションで、ソーシャルニーズを想像し続ける」2030年に向かっての経営ビジョンの中で、「より良い社会づくりを志し、スペシャリティを備える多様な人材が集い、一人ひとりが主体性を持って能力を発揮する集団であり続けるためダイバーシティ&インクルージョンを推進する」というコンセプトを打ち出しています。
オムロンのダイバーシティ&インクルージョン
Diversity ⇒ 「より良い社会づくり」へ挑戦する多様な人たちを惹きつける
Inclusion ⇒ 一人ひとりの情熱と能力を開放し、多様な意見をぶつけ合うことで、イノベーションを想像し、成果を分かち合う
求める人財像
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社会的課題の解決を志す人財
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志の実現にむけて、スペシャリティを自ら磨き続ける人財
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チームの成果に拘り、自らリーダーシップを発揮する人財
〇これまでの取組み
2012年にダイバーシティ推進の専門部署を立ち上げてから、それぞれのテーマに取り組み拡大してきました
2012年~
・女性の活躍
・障がい者の活躍
・外国人の活躍
・キャリア入社者の活躍
・高齢者の活躍
2014年~
・介護を抱えるメンバーの活躍
2015年~
・LGBTメンバーの活躍
2018年~
・治療を抱えるメンバーの活躍
〇女性活躍について
2021年度末現在、国内社員約10,000人中に女性2,338人(比率22.3%)、女性役員5人、女性経営基幹職123人(8%)、女性係長530人(10.1%)、女性新卒採用比率38人(29.7%)です。女性比率は、入社当時から変化あまり変わっていませんが、女性経営基幹職の人数は2012年時点では22人(1.5%)でした。女性リーダ研修、一般職制度の廃止、マネージャー育成研修、人事制度拡充などを経て10年で8%になりました。しかし数値の達成は目的ではなく結果であって、多様なロールモデルが各部署に複数名誕生し、各々が存分個性を発揮することで新しい価値を想像している状況を作りだすことをゴールとしています。
他社の先進的な取組みのすごいことを真似するだけでは上手くいきません。地道に自社に合う取組みを進めることが大切だと実感しています。
〇障がい者活躍について
50年前、創業者の立石一真と太陽の家 創設者“パラリンピックの父” 中村 裕 博士が九州の別府に障がい者の方が働ける日本初の福祉工場を創り、身体障がい者雇用を開始した歴史があります。しかしながら、特例子会社以外のどの職場でも障がいのあるメンバーが、いろいろな部署でも働ける環境になるための努力を続け、2021年6月の時点で261名(法定雇用率2.3%を上回る3.1%)のメンバーがグループ全社の様々な職場で活躍しています。通路の幅の設計を含めてのバリアフリー化、音声認識ソフトの活用などの取り組みを経て、作業の見える化など、未来に向けたイノベーションの種が現場から生まれています。
〇LGBTQの取り組みについて
2015年にスタートした時は、当事者メンバーの存在を把握していたわけではありませんでした。しかし、世の中でいわれる一定数の当事者メンバーがいるという仮説のもと、会社としての取組みをどのように進めていくのがいいのかという点で、まず専門家からの研修を実行して活動報告を公表したところ、各部門やメンバーからの連絡・相談が届き、具体的な取り組みを始めることになりました。制服のユニセックス、人事制度の配偶者定義に同姓パートナーを含める制度を改定、事実婚を認める制度の改定などを行い、社内外からの評価をいただています。
〇グローバルの取り組み 2030年に向かって~
日本で取り組んでいることだけでなく、グローバルに活動を広げる、ということが私自身のこれからのミッションで、まさに取り組み始めたところです。
事業領域の拡張・新たな価値の作りこみ向け、「多様な人材を惹きつけ、個々の人の能力発揮を促す人財施策」の展開をグローバルに加速しようと、各エリアごとに取組みを進める中で、日本の代表として他のエリアと繋がって頑張っていきたいと思います。
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今回の発表は、事例発表という枠を超えて、ダイバーシティ推進担当者のロールモデルとして、イキイキと仕事に取り組まれている上村さんの姿に、研究会メンバーは深く共感、感動しました。時短管理職として仕事も、家庭・人生も大切にした働き方、生き方が、会社の方々をどんどん巻き込んで会社の変革に繋がっていると感じます。組織風土を変えていくために、ダイバーシティ推進担当者の熱い想いと生きざまの大切さを学ばせていただきました。
上村様、貴重なお話をどうもありがとうございました。
(文責 植田寿乃)