「『早期退職制度』と『セカンドキャリア』~ピンチではなくチャンス 48歳の挑戦~」


本日は、「『早期退職制度』と『セカンドキャリア』~ピンチではなくチャンス 48歳の挑戦~」と題し、2021年1月に食品卸会社(支店長)を退職され、2021年8月 むすびやくまさんを起業された、むすびやくまさん代表、佐藤貴司様にご講演いただきました。

佐藤様は大学を卒業後、食品卸会社に入社され、25年間ご勤務されました。会社では支店の営業、商品部での商品開発、労働組合での専従役員、マーケティング部での店舗開業支援、支店での支店長等をご経験されました。

PART1 キャリアビジョン【夢】の変遷
佐藤様の夢は商品開発→社長(ステップとして支店長)→独立、と変遷されてきました。
商品開発の仕事や労働組合の役員など、組織から求められる役割と、自分の夢・目標が重なっているときはとても充実していたそうです。
ただ、支店長になられた頃から、自分の夢がどんどん大きくふくらみ、組織から求められる役割と重なる部分が少なくなり、結果として独立・開業に至ったそうです。

今振り返ると、会社員時代の様々な出会いがひとつとなって、佐藤様の飲食店開業という夢が具現化されたそうです。仕事との出会いでは、食材の流通ルートや価格体系の熟知、開業支援業務の経験、人との出会いでは、元料理人の方とのメニュー開発、起業されている方との出会いなどがあり、さらに会社卒業後も、仕事の枠を超えた信頼関係を育んでいかれ、こうしたこれまでの様々な出会いにより、夢が具現化できたそうです。

佐藤様が独立を決断したきっかけは、2020年3月のコロナ禍で自分の人生を考えたことでした。自宅待機や在宅勤務で一人になる時間が多い中で、自分はこのままでいいのだろうかとじっくりと考えたそうです。そして、今、自分がやりたいことをやろうと決意し、2020年10月の早期退職制度に応募され、退路を断って独立されました。

<早期退職制度について>
佐藤様は、当時在籍された会社で早期退職制度が導入された際、支店長として、チームの45歳以上の社員全員と面談し、そのチームのメンバーには辞めてほしくなかったため、引き留めをし、結果として全員残ってくださったそうです。ただ、ご自身はその制度に応募され、当初はありとあらゆる人たちから引き留めにあわれましたが、意志は変わらないということで、最終的には会社側も理解を示し、夢も応援してくださっているそうです。
佐藤様は、いわばセカンドキャリア実現のためのツールとして早期退職制度を活用し、今のお店を開業するに至りました。

Part2 
●卒業し、起業して見えた世界
おむすび屋さんを開業された佐藤様ですが、そもそもなぜ「おむすび屋」だったかというと、佐藤様は食べるのが好きで、特にお米が好きで、かつコロナ禍だったということもあり、テイクアウトメインでできる業態がよかったため、おむすび屋さんを開業されました。現在、売上の7、8割はテイクアウトとウーバーイーツとのことで、テイクアウトメインのおむすび屋さんで正解だったと思っていらっしゃるそうです。

開業までの苦労には、楽しい苦労と苦しい苦労があり、楽しい苦労は、どこに出店するかの市場調査や、おむすびの具材やお米の産地をどうするか調べたり食べ比べ等したことで、それらは楽しい苦労だったそうです。
逆に苦しい苦労としては、個人事業主になると、住まいを借りにくかったり、資金繰りや、アルバイトの給与計算、年末調整等、全部自分でやらなくてはいけないため、それらは苦しい苦労だったそうです。
起業後は、自分自身ですべて決断実行できるということで、スピード感がサラリーマン時代の10倍違うとのことです。

●卒業し、振り返って見えた会社と個人の理想的な関係
「会社と個人の理想的な関係」について、佐藤さんのお考えを以下の通りお話くださいました。
・早期退職制度
早期退職制度は会社と個人がwinwinな制度であるべきであり、固定費削減の手段として使うのではなく、いつでも使えるような制度としておくことが理想。そのためには個人のキャリアを考えさせることが重要であり、キャリアとは、会社の中だけのキャリアではなく、セカンドキャリアのことまで考えささせた方がよいのではないか。
・兼業・副業、独立支援
会社として、もっと独立志向の強い人材の採用や支援をしてもいいのではないか。今は、入社から定年まで働き上げるのは現実的ではない。独立志向が強い人は優秀な人が多いため、会社としても割り切って、いずれ辞めるかもしれないけれど、いる間はしっかり活躍してもらい、新規事業を任せてる等してもいいのではないだろうか。
また、独立の際は、独立も支援し、個人事業主となった個人とも、会社は良好な関係を続けていくのがよいのではないだろうか。

人材が流出してしまうから、上記のような制度や取組みは入れられない、という会社は、先がないのではないか。特に若い方に対しては、全面的に取り組みを打ち出して、それでも人が残っている会社とは、魅力的に映るし、個人のキャリアを応援することは、会社のあるべき姿だと考える。
早期退職制度は、そもそも「早く辞める」という意味であまり適切ではないとも思うため、会社と個人がwinwinとなる、前向きな名称がいいのではないかと思われる。

また、企業として、会社の中だけのキャリアではなく、個人個人のセカンドキャリアを意識させることも重要だと考える。セカンドキャリアを描けていると、モチベーションが高く、目標、目的をもって仕事をし、会社にいる間は、生産性の高い人材として活躍してくれる。
セカンドキャリアは常に考えるべきことであり、10年後、20年後、、、そういう将来のことを考えさせることが重要である。

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佐藤さんにとってのセカンドキャリアは、起業して自分のやりたい飲食店をやることであり、そのキャリアをスタートさせた佐藤さんの今後は、現在の店舗を軌道に乗せ、23年に2店舗目をオープンさせ、23年に法人化、24年に3店舗目オープン、25年に海外進出、42年に会社を売却し、サードキャリアをスタート、とまさに先の先までビジョンを明確に描かれていらっしゃいます。

これからの時代、会社と個人がwinwinの関係を築いていくために、会社としては個人のキャリアを応援することが大事であり、個人は自身のビジョンを描き、その実現のために努力し成長し続けることが重要であるということを改めて認識させてくださいました。
佐藤様、どうもありがとうございました。

(文責:高久和男、臼井淑子)

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