◆2016年11月25日(金)
100回「『昭和型男性主導組織を私たちが変える!』二人の女性ダイバーシティ推進室長の熱い想いと施策に学ぶ」

事例発表:
さくら情報システム株式会社 人事部 ダイバーシティ推進室長 薄井昌子氏

富国生命保険相互会社 人事部 ダイバーシティ推進室長 金子こずえ氏

 

ついに第100回 女性と組織の活性化研究会です!

記念すべき日にふさわしい、秋晴れのお天気でした。

本日の研究会には28名の皆さんが参加され、そのうちの半数以上が初参加で、フレッシュなメンバーからベテランのメンバーまでが集う豪華な研究会となりました。

 

まず最初に、富国生命保険相互会社 ダイバーシティ推進室長 金子こずえさんに事例を発表していただきました。富国生命保険相互会社は関東大震災が起こった2ヶ月後の大正1211月に富国徴兵保険相互会社として創設されたという歴史があり、お客様としっかり向き合う対面販売を大切にしている会社です。なので、現在もネット販売は一切行っていないそうです。

金子さんは高校卒業後、当時全日本9人制バレーボールの実業団があった富国生命保険相互会社にバレーボール選手枠で一般職として入社しました。高校時代は、厳しいバレーボール部での練習と学業だけでなく、金子さん自身の高校の授業料を捻出するためにアルバイトにも追われた壮絶な毎日でした。「今振り返ってみるとその時の経験があるから今があるのだと思います。」と話す金子さん。高校生の頃から、どんな逆境も吸収し自分の糧にしてしまう芯の強さと柔軟性があったのでしょう。

そして、20代前半でご結婚し、入社後9年目にして一般職から総合職に転換。そして、29歳の時と31歳の時にお子様を授かり、総合職ワーキングマザーとしての道を邁進されてきました。平成274月には、現在のダイバーシティ推進室長に就任されています。平成214月にダイバーシティ推進担当を新設した当時は、障害者雇用の取り組みが中心でしたが、現在は障害者雇用とその定着支援も継続しつつ、女性活躍推進のための制度改正(平成244月~一般職制度改正、平成2810月~一般職を廃止しエリア職に変更)や女性社員自身が良い刺激を受ける場としてフォーラムの開催なども進めつつ、LGBT(性的少数者)への理解向上にも取り組み始めています。それ以外にも、大切な家族を紹介し相互理解を深めるためのフコクファミリーデー、新人のためのメンター制度、イクボス増殖研修、乳がん知識向上のe-ラーニングやセミナーの実施などなど、社員の方々への愛情あふれる仕組みが盛りだくさんです。

ただ、そんな富国生命においてもいくつかの課題は抱えているそうです。平成25年に実施した「ダイバーシティ推進に関する社内意識調査」からは、男性社員と女性社員の意識の差があることが分かりました。社内で仕事における男女の役割は「違う」と感じる男性の割合の多さに比べて、女性は「同じ」であると感じている人が多いのです。また、約半数の男性が仕事において今も十分に活躍していると感じている一方で、活躍していないと感じている女性は34.9%でした。今後、金子さんのような素敵な管理職を目指す女性社員の育成とその女性たちを理解し応援してくれる管理職の男性たちを増殖させていく必要があるようです。

最後に金子さんが「自分が必要とされているということを実感できることが大切!!」と力強くおっしゃっていたことがとても印象的でした。その通りだと私も心から思います。金子さんのダイバーシティ推進に対しての情熱がバシバシ伝わってきました。一人一人の社員が自分を必要とされていると実感できる職場になるのも、近い将来現実のものになることでしょう!!

 

さくら情報システム株式会社からはダイバーシティ推進室長の薄井さんに発表していただきました。

ダイバーシティ推進室ができる前から自主的に活動していたという肝っ玉母さんのような薄井さんは、とても熱く、会場内に笑顔があふれる素敵な発表をしてくださいました。

ダイバーシティ推進室は専任2名、兼務4名の6名。メンバーの皆さまは薄井さんを筆頭に、複数本部で部長を経験された方やワーキングマザー、イクメンなどまさにダイバーシティな素敵なチームで急ピッチに取り組んでいらっしゃるそうです。とても今年7月からスタートしたとは思えない!本当に盛りだくさんの取り組みをなさっています。

大事にしているのは『さくららしさ』

ダイバーシティ推進施策を進める上で最初に発信したことは、単に女性だけの取り組みではなく経営、人事、管理職、従業員と、それぞれ皆が同じ方向を向き、同じ目的感で取り組んで行くこと。「仕事のやりがい/労働力の確保/生産性の向上/社員のワークライフバランス/業績の向上・・・」すべての人に関わる大事なことなんだということを理解していただき、新しい「さくららしさ」をつくることを目的とした施策だということを強調したそうです。

その中で大変興味深かったのは、ダイバーシティのポータルサイトです。いろんな角度から社員に向けて情報発信しているそうです。社長のトップメッセージはもちろん、部長を経験されたメンバーの『おじさんが考えるダイバーシティ』や時短管理職を登用した上司、海外赴任者などいろいろな方々に登場してしていただく『社員が語るダイバーシティ』は全社展開するのにとても素晴らしい取り組みだと感じました。ダイバーシティ推進というと管理職層や男性社員からは「もうお腹いっぱい」「女性活躍推進でしょ?もう充分でしょう」などと言われ、全社展開に苦戦されている企業が多いと思いますが、こちらの取り組みは新たな意識改革となる突破口になるのではないかと思います。中でも『おじさんが考えるダイバーシティ』シリーズは素晴らしく、目からウロコでした。部長を経験された人間力ある男性管理職の方からの情報発信ということで、これまでとは違ったおじさん目線の切り口となっており、男性社員や管理職にも多くの共感を持っていただいているそうです。ダイバーシティ推進室のチームワークは素晴しく2016年はダイバーシティの啓蒙活動、働き方改革、女性活躍推進、育児・介護の両立支援、更には中高年のキャリアサポートなど、本当にパワフルに活動されています。今は2017年への更なる加速を目指して奮闘中だそうです。また『えるぼし段階3』にも認定。おめでとうございます!薄井さんの熱意とユーモアあふれるお話に、たくさんの笑いとパワーをいただきました。

金子さん、薄井さん、貴重な事例を発表いただきありがとうございました。
文責 キャリアカウンセラー 川村貴子、ディ・マネジメント株式会社 田中慶子