「生涯現役時代の50歳からの働き方とは」

本日は、事務局合わせて35名が参加しました。特に労働組合所属の方の参加が多く、本テーマは労働組合での関心の高さが感じられました。
今回は下記のような3部構成で開催しました。
【第1部】主宰者 植田による事前アンケートの分析結果報告
【第2部】事例発表 「役職定年制度を考える(本人の本音、会社の悩み)」
【第3部】講演「50代からの再就職、転職事情」 キャリアコンサルタント 山岡正子

【第1部】主宰者 植田による事前アンケートの分析結果報告 事前アンケートより(回答数:21社)
 50代の社員は、ここ3年で着実に増えていることがわかりました(増えている32%、少し増えている47%)。バブル期の大量採用世代が徐々に50代に突入という、社会的背景もあるようです。一方、50代の管理職が増えているかというと、「変わらない」が約5割でした。30代の管理職を意図的に増やしている、40代で管理職にならないと50代になってから管理職にはなかなかならないとの声もありました。また、いまは55歳役職定年と50代の管理職昇格数を比較してプラスマイナスゼロに近いが、今後は役職定年数>50歳以上の管理職昇格という構図になりそうとの回答もありました。50代管理職の全体的なモチベーションについては、どこかに偏ることなく意見が分かれました。「わからない」37%が一番多いのは、50代社員の多くが男性で、本音が見えづらいからかもしれません。モチベーションの高い人の特徴としては、「自分固有の高い能力を備え、必要とされる業務に誠実。しかしおごり高ぶらない」「自分なりの目標を持っている」「世間を知っていて、自社・自分との比較ができる」「後進の育成をしてくれる」などが挙げられました。一方、モチベーションの低い人の特徴は、「給与や地位に固執する」「閉鎖的で世間を知らず、情報が少ない」「自分の保身に入っている」のほか、心身ともに疲労度が高い、子供のことや家族の介護など大きな悩みを抱えているとの回答もあり、ワークライフバランスがモチベーションに影響を与えていることがよくわかります。
 役職定年制度については、60%が「ある」と回答。いまは「ない」企業でも、今後は制度を作る企業が増えざるを得ないでしょう。役職定年になった人たちのモチベーションは全体的に低い傾向です(高い0%、やや高い12%、やや低い23%、低い24%)。そのような中で、モチベーションの高い人の特徴に「役定後も自分の役割を見つけて実現できている」との回答がありました。役職定年を機に、自身の生き方を見つめ直し、役割や働きがいをいかに見出せるかが大切なことが改めてわかります。
 50代の非管理職のモチベーションについては、はっきりと低く出ていました(高い・やや高いはいずれも0%、やや低い47%、低い16%)。50代社員のモチベーションを総評すると、管理職でも役定になった人でも非管理職でも全体的に低い傾向にある(少なくとも周囲からは低く見えている)ようです。
 少子高齢化に伴い、60歳以上で働き続けている人はここ3年で確実に増えています。研究会メンバーの企業でもその傾向は顕著で、「増えている」「少し増えている」あわせて83%でした(増えている44%、少し増えている39%)。役割を与えられている、仕事や会社が好きという理由から、彼らのモチベーションが高いと回答した企業は26%にとどまっており、どちらかというとモチベーションはやや低いようです。
50歳以上の人たちの働き方は、今のところ50歳未満の人たちに良い影響を与えているとは言い切れず、個人差が大きいとの結果になりました。人生の先輩が、若い世代のロールモデルになれていないのは寂しいことです。
 50歳以上の人を対象とした研修は、回答企業の3割で行っていました。主に金銭面のキャリアプランセミナー、ライフプラン設計、キャリアデザインといった取り組みが挙げられました。研修を計画中の企業はまだ10%でしたが、今後はこの割合が増えていくことでしょう。
 今回のアンケート回答者の年代は、半数近くが45歳以下でした。「あなたは何歳まで今の会社で働き続けたいですか」との設問に、「70歳まで」5%、「生涯現役で」24%と、約3割の方が働けるだけ働きたいと回答していました。社会で役に立ちたい、広く社会で活躍できる人材になりたい、充実した日々を送りたいとの前向きなコメントが多く、研究会メンバーの意識の高さを改めて感じました。

【第2部】事例発表 「役職定年制度を考える(本人の本音、会社の悩み)」
 本日は企業で中核業務を遂行され部長職に就き、役職定年後は更に新しい環境の部署で活躍されている女性に発表頂きました。
終始本音ベースで話を進められ最後に「働き方は十人十色。待っていてはダメ、肩の力を抜いて〔好き〕を探すこと。自分にしかできない仕事、人の役に立ちたいという気持ちを持ち続けること、ビジョンを描いておくこと」と堂々と力強くメッセージされて、ここまで至るまでの心の変遷をも深く知ることができました。
 ひと昔前まで同社では、子会社へポジションUPでの移籍制度などがありましたが、子会社数の減少などで希望通りに転籍できるチャンスも少なくなってきた状況や、役職定年された方々からの、燃え尽き状態、自分のサラリーマン人生は終わった等のコメント、給与減額の実態をお話し下さいました。また、役職定年時に非管理職だった方が、定年までの5年間に役職定年後の管理職に昇進出来る制度があり、モチベーションのアップにつながっているというお話もありました。
 役職定年の話しに留まらず、参加者が無意識に自分事として捉えてしまう辛い実話もありました。例えば定年再雇用について、制度が良く分からないまま再雇用となり、給料明細を見て驚き愕然。住民税は前年の給与で計算されるので手取りが数万円。実質減俸の現実につきつけられる。給料が下がる⇒モチベーションが下がる。
 今でこそ高年齢者雇用安定法により60歳定年時に希望者は再雇用(1年契約社員)することになりましたが、それ以前は、評価により定年後再雇用できない対象者の定年後のライフプランが変わってしまったという事例もあったようです。事例紹介頂くなかで、役職定年に続く定年再雇用時に特に留意すべき点は次の通りと理解できました。
・労働条件等、きちんと説明し理解し納得ているか確認。
・仕事とのマッチング、参事役など名刺の肩書きを工夫しモチベーション維持。
・本人も自分の職業人としての足跡の「棚卸し」をする。
一方で、同社が全国に支社を持つ利点を活かし、家族がいる地元に転勤できる「ふるさと人事」制度の紹介もありました。仕事と介護との両立など家庭など諸事情に直面しても仕事を続けて行くことができる有効な施策と参加者方々の安心感を誘っていました。

【第3部】講演「50代からの再就職、転職事情」
 キャリアコンサルタントである山岡正子さんのお話は、50代の転職市場における市場価値と就活の大変さや揺れる心についてについてご自身の実体験をもとにわかりやすくお話いただきました。山岡さんはITのベンチャー企業で人事部長、マーケティング部長、海外営業部長と数々の管理職や取締役まで経験され、現在はキャリアコンサルタントや研修講師の仕事をされています。
 40代と50代では転職市場での市場価値の差を大きく感じたそうです。50代になると、転職市場では『シニア』とよばれ、希望する職種は求人がなく、年収も希望する額の半分以下にさがってしまう。これまでの数十年のキャリアはまったく役に立たないのだと感じたそうです。
 そんな山岡さんを救ってくれたのが、40代の頃にとったキャリアコンサルタントの資格だったそうです。年を重ねても学び続けることの大切さや収入源は1本ではなく複数持つなど、人生の後半戦のセカンドキャリアをイメージするためのヒントをいただきました。今後の人生「役職定年で年収が下がったとしても転職は本当に難しい。自分の価値を一番わかってくれているのは今の会社だよ。」という言葉がとても印象的でした。
 山岡さんのお話を聞いて受け取る側の反応は年代によってそれぞれ違っていていました。20代、30代の若手の方は「シニアの方は素晴らしい経験や技術をもっていらっしゃるので、若手の指導をしてくれればいいのに、自分たちが『仕事は教わるもんじゃない、盗め』といって育てられたため、教え方を知らないから教えることが出来ないし変わろうともしない。もっと若手を助けてほしい。シニア社員の方にこの話を聞いてほしい」という言葉が。また、40代の方は「いつもモチベーションの下がっている50代の方に対して、怒りを感じていたが、少しかわいそうな気がする。こんな気持ちになるんだなと思ったまた、自分もあと数年したら50代になるので、人ごとではないなと感じた。若手に頼ってもらえるようにしておかないと。」50代の方は「まさに自分のことのようで考えさせられた。50歳になって部署を移され、どうしようと悩んでいた時期だったので今日お話が聞けて良かった。もう一度ここで頑張ろうと前向きになった」などたくさんの意見が飛び交っていました。
お二方より貴重な事例を発表いただき本当にありがとうございました。

 第5回目の当研究会は新しい参加者も増え、シニア活用に関する施策を共有し、特に役職定年、定年再雇用の課題について活発なディスカッションとなりました。
 前半のディスカッションでは、事前アンケートと植田のコメントを踏まえて、50代社員はマインドセットは必須だが手が付けられていない現状や企業の取り組み例を共有しました。 アンケート結果から特に次の3点、①役職定年制度がある6割、無いとかつてあったが4割、と現時点で役職定年が無い企業の割合が高い。②50代になると管理職も非管理職もモチベーションが高くない結果となっている。③50歳以上の人たちの働き方が50歳未満の男女に良い影響を与えているかの問いに対し、与えていると少し与えている合わせて僅か11%。及び50歳以上の人を対象とした研修について話題が集中しました。今日のテーマは働き方改革やダイバーシティ推進の一環として重要なので積極的に取り組んでいきたいという意向もアンケート結果およびディスカッションから明らかになりました。
 後半のディスカッションでは、役職定年が無く年代問わず役割に応じ活き活きと働いている企業の方からのコメントもあり他参加者にも良い影響がありました。また労働組合専従の方々も参加していて、今後のシニア層の人事制度取組みに対する真剣な体制を共有下さいました。
昨今の企業事情の一つであるポスト不足の折、ライン職に就かないまま、定年を迎える社員が増えてきています。これからは、その人達のモチベーションにも目を向ける必要性を感じました。

 次回となります第6回目の研究会は、2018年2月14日(水)に「残業削減、生産性向上の実践者から『働き方改革』を学ぶ!」~ダイバーシティ推進を実現するための働き方改革は、意識改革&実践~」と題して開催します。講演ゲストは、株式会社プロスタンダード 代表取締役社長 若林 雅樹氏となり、「働き方改革の推進担当者が乗り越え必須の9つの壁」を―テーマにご登壇いただきます。皆様の参加をお待ちしておりますので、引き続きどうぞよろしくお願い致します。

文責:株式会社日経BPマーケティング 神田絵梨、キャリアコンサルタント 長島裕子、ディ・マネジメント株式会社 田中慶子