「ダイバーシティ組織をリードするワーキングマザーから学ぶ『働き方改革』」

本日は、事務局合わせて16名となり、下記のような2部構成で開催致しました。
【第1部】主宰者 植田による事前アンケートの分析結果報告&ミニ講義
【第2部】事例発表 ミヨシ油脂株式会社 経営企画室 佐藤範子氏

【第1部】主宰者 植田による事前アンケートの分析結果報告&ミニ講義
■事前アンケートより(回答数:13名)
 ダイバーシティ推進をリードしている部署について、人事&人材開発部門と回答したのは39%、ダイバーシティ推進専門部署23%、暫定的プロジェクト体制が15%。反面、推進部署が無い15%、社長室・経営企画は0%。
ダイバーシティ推進を率いるリーダーについて、ワーキングマザーと回答したのは25% (小学生以下の子供がいる17%、中学生以上の子供がいる8%)、男性25%とワーキングマザーと同率でした。
 20代~40代のワーキングマザーは、ここ3年で増えている(33%)と少し増えている(67%)の合計で100%。 女性は働き続ける時代となってきていると言えます。
20代独身女性達のロールモデルとなるワーキングマザーが増えてきていると7割近くが回答していますが、ワーキングマザーたちの働き方は周りの人たちに良い影響を与えているかの問いに対し、「与えている」「少し与えている」の合計が16%、個人差あり25%、わからない59%。昇格スピードにつき当事者が満足するものかについて満足はゼロ、やや満足17%、やや不満足25%と不満足25%で否定感が5割、分からないは33%。しかし、正当に評価する上司、管理職は増えているかの問いについては、増えている、少し増えている合計で50%と、これからの改革が期待できます。

■主宰者・植田によるミニ講義
講義概要を下記します。
女性活躍推進、ダイバーシティ推進は組織風土改革であり、キーパーソンの信念と求心力が重要です。人は共鳴し感動した時に変わることができます。
キーパーソンの条件は次の通りです。
1.自分事(自分の人生)として女性活躍推進を体感している
2.自分自身がイキイキ働く、生きることを体現している
3.時間を管理し、ワークライフバランスを大切にしている
4.自分の言葉で情熱で、ダイバーシティ推進の重要を周りに語れる
5.ダイバーシティ推進の未来を信じ継続して行こうという強い想い
6.自分の足で、生の声を聴きまわるフットワーク
7.次の人にしっかりとバトンを引き継ぐ気配り、心配り
長時間労働や滅私奉公に代表される昭和的なスタイルと決別し、ダイバーシティ時代の働き方、生き方を体現することがキーパーソンの役割であり、その代表格が時短で働く女性たちです。育休明けの女性は、限られた時間でのアウトプットを挙げる工夫や仕事(会議、連絡)を自ら見直し効率化を図る為にタイムマネージメント能力が高くなります。また増加するイクメンや介護者、シニア層などへの理解が深まりワークライフバランス実践へと繋がります。子育ての実体験や持ち前の母性が部下を育て活かし、周りの人を見捨てず可能性を広げていきます。ワーキングマザーは働き方改革のロールモデルなのです。
 勿論、トップメッセージは必要ですが、経営陣だけがキーパーソンだと、その構造自体が軍隊型となる傾向があり強制されても人の意識は変わりにくく、トップダウンには限界があります。また、女性達だけでは、男女や既婚未婚などの不公平感が増長する懸念があり、ボトムアップにも限界があると言えます。
 意識改革だけでなく、言動、態度の変革が重要であり、経営陣、人材開発部門、管理職、男性社員、女性社員、それぞれの立場を尊重しつつも、風土改革を進めるには、経営トップと現場当事者(女性)のタッグが重要です。
 男性トップキーパーソンが上から下への流れを作り、女性キーパーソンが横に繋げる拡大パワーを発揮することで布状態での広がりから変化が起きれば組織が変わっていきます。
更に、年代毎に求められる役割『20代=成長、30代=自立、40代=責任、50代=貢献』と人生に起きることを自覚することで、上述の縦横の絆に斜めの強みが加わり、変革の為のエネルギーを持続することができ、社内浸透も進みやすくなります。

■ディスカッション
 アンケート結果やミニ講義を踏まえたテーブル毎のディスカッションでは、時短取得者に対し周りの理解はマダマダ、定時退社で生産性が高いので働き方としては素晴らしいが、定時で帰っちゃうんだ、軍隊世代の男性たちが、たまには残業しろ、の空気を出すこともある等の懸念点が共有された後、社員其々が努力することが大切、部署毎の温度差があるのは避けられない、急激な変化を求めると強い抵抗にあう等の課題について、解決に向けた意見交換に集約していきました。
 ワーキングマザーがキーパーソンであることは頭では理解できても、ロールモデルがいない現場での男性上司の意識不足や経営者の理解不足他、キャリア育成に関する取組みに問題があると考えていることが今回のアンケートでも反映され、課題が【ある67%/少しある0%/無い0%/わからない33%】と極端な回答となりました。政府主導の働き方改革に沿った言葉を使うこともノウハウの一つですが、風土改革は一朝一夕では実現できず、ダイバーシティ&インクルージョンに繋がるには時間が掛かります。やり続ける事が肝心、地道な取り組みの連続であることを改めて認識しました。

【第2部】事例発表 ミヨシ油脂株式会社 経営企画室 佐藤範子氏
 ミヨシ油脂株式会社の佐藤範子さんからは、「ダイバーシティ組織をリードするワーキングマザーから学ぶ『働き方改革』」をテーマに、女性活躍推進委員会“きらり!”の取り組みについて発表いただきました。最初にご紹介いただいたミヨシ油脂株式会社の経営理念には、『「人によし、社会によし、未来によし」、油脂の力を活かした“ものづくり”を通して、すべての人から信頼される企業であり続けることを目指します。』と掲げられており、これまで一度もリストラをしたことがなく、男性、女性に関わらず勤続年数が長いというお話しから、従業員を大切にする社風が伺われました。
 佐藤さんは、本ダイバーシティ&インクルージョン研究会の前身となる「女性と組織の活性化研究会」からのメンバーであり、“一緒に働く人たちがライフイベントなど様々な壁にぶつかった時にも、成長をあきらめずに活き活きと働き続ける姿を応援したい”という強い意志の下、これまでの研究会にも熱心に通われ、また、植田が主催する植田道場の道場生として社内講師の勉強も続けてこられています。その気持ちが実り、2016年1月に女性活躍推進委員会“きらり!”が発足しました。この“きらり!”の活動に関する社長のコメント「女性の働き方改革は現場からの声がきっかけだった」、「経営者が思いつかない視点や提案は刺激になる」が日本経済新聞に掲載されるなど、社内でも注目されている取り組みとなります。
 初年度の活動内容としては、ランチミーティングや社員意識調査、他事業所との交流会などがあります。社員意識調査は初年度にどうしても実施したいという思いがあり、外部機関を利用して客観的な現状分析ができるように、社内のさまざまな人と交渉して実現されたそうです。他事業所との交流のきっかけは、社長から“きらり!のメンバーで工場見学に行ってきたら?”と提案いただけたことで、訪問先の上司の方々にも快く受け入れていただき、また、工場見学だけでなく、直接“きらり!”の活動紹介をしたことで、有意義な時間が共有できたそうです。8月には中間報告会として1月~6月までの活動報告を実施、報告会を行うなかで改めて自分達の活動を意識することができ、心地よい緊張で身が引き締まると共に上司の方々への理解を深めることができたとのことでした。
 活動2年目の今年は、他事業所との交流会の継続実施と、「仕事いきいき応援セミナー」という社内セミナーを企画し、“きらり!”のキャッチコピーである「輝け私!私たち!」の実現に向け、佐藤さんご自身が学んだ“幸せなキャリア”-自分らしくイキイキと輝くために-を共有することで、働くことを通じて成長し続けることの大事さ、自分で自分の人生を切り拓いていくことの大切さを伝えてこられました。
 今後の活動については、ダイバーシティ基本方針の策定や役員・幹部職向けの講演会、パパママ向け子供の教育お話し会、仕事と介護の両立、シニア世代の活躍推進、障がい者雇用支援など多岐にわたり、もはや“女性の活躍”ではなく、共に働く社員全体の活躍を推進したいという高い意欲をお持ちでした。また、佐藤さん自身がワーキングマザーとして働いてきた中で自分に起こった変化としては、日々忙しい毎日であるからこそ限られた時間を効率よく働くようになったこと、そして育休を取った時に感じた“自分がいなくても職場がうまく回っていることに対する一抹の寂しさ”のお話を伺いました。組織とはそういうものではあるのだけれど、その経験から、自分でなくてはできない、自分ならではの専門分野を持ちたいという気持ちが強まったそうです。
 参加者からの「なぜそんなにも情熱を持てるのか、その原動力を教えてほしい」という質問には、「社員一人ひとりの成長が、会社の活性化につながるし、それを実現したいから。一緒に働いている人たちが、もっとイキイキと働けるように、背中を押してあげたい。」というメッセージをいただきました。物腰が柔らかく、穏やかなお人柄の印象ですが、胸の中にある熱い想いと周囲を巻き込むしなやかな姿勢は、まさに現代を生きる、働く女性達のロールモデルであると感じました。
佐藤さん、ありがとうございました。

 次回の研究会は、第5回「生涯現役時代の50歳からの働き方とは」と題して、2017年11月24日(金)に開催致します。皆様の参加をお待ちしておりますので、引き続きどうぞよろしくお願い致します。
文責:キャリアコンサルタント 長島裕子、キャリアコンサルタント 山岡正子