★『令和時代だからこそ「複業」が働きがい・生きがいをもたらす』

~ロールモデルと支援コーチが語る、実態とその効果~★ 臼井淑子

 

2023125日(水)【第28回】オンライン研究会は『令和時代だからこそ「複業」が働きがい・生きがいをもたらす ~ロールモデルと支援コーチが語る、実態とその効果~』と題して、キャリアコンサルタント・社会保険労務士の臼井淑子氏にご登壇いただきました。

臼井氏は、キャリアコンサルタントとして企業や大学での研修講師を行うほか、「複業支援コーチ」として、ブルーブレイズ社「ライフシフトラボ」にて60日間で複業デビューを目指す方の伴走支援を行っております。

 

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<副業を取り巻く環境>

昨今、政府は副業・兼業を積極的に後押ししており、副業を解禁する企業も徐々に増えてきています。2021年時点での企業の副業容認率は55.0%であり(2021年「パーソル総合研究所第二回副業の実態・意識に関する定量調査」より)、2018年と比較して3.8ポイント上昇をしています。

なお、働く人たちの副業意向は40.2%となっています。(勤務先従業員人数10人以上 正社員20-59歳。2021年「パーソル総合研究所 副業に関する調査結果(個人編)」より)

 

<複業のメリット>

ここからは「副業」という漢字を、“経験・スキルを活かしたキャリア形成・キャリア自律手段としての副業”、という意味で「複業」と表記いたします。

複業のメリットはいろいろありますが、臼井氏が複業支援コーチをする中では、複業を始められた方々より「本業のモチベーションが上がった」「これまでのキャリアに自信が持てた」という声がたくさん寄せられているそうです。さらに、自身も複業を多数経験されてきた臼井氏より、体験談として

①思わぬところで自分の知識や知見、スキルが役に立ち、自分も捨てたもんじゃないと自信がもてる

②今いる世界がすべてではないと思うと、心理的な余裕が生まれる

③多様な人々との関り、経験の中でいろんなことを吸収して、成長できる

④今の仕事に感謝の気持ちをもち、改めて新鮮な気持ちで取り組めるようになる

等のメリットが紹介されました。

 

<複業実践>

複業を開始するにあたっては、ほとんどの方は当初、自分の何が複業になるかが分からない方々ばかりだそうですが、仕事の経験や人生経験などを振返り、様々な観点から棚卸しをしていく中で、最終的には「これをやりたい!」と思えるその方オリジナルの複業を創り出していかれるそうです。

 

ただ、中には複業禁止の組織もあるため、そういう方々の場合は、「NPOでのボランティア・プロボノ」などの活動行うとよいというお話がありました。ボランティア等では、金銭は得られませんが、非金銭報酬(スキル・知識・人脈・実績・信用等)が蓄積でき、これらは後から換金できるため、副業禁止の間はお金で買えない資産をコツコツ貯め(=非金銭報酬)、いずれ複業が解禁される日、転職・起業する日、定年を迎える日に備えていくとよいとのことです。

 

最後に、臼井氏から企業への提言です。

①メリットばかりの複業を容認へ

優秀な人材の定着や採用、社員のモチベーションアップ・成長のために、複業は非常に有効であり、複業は是非とも容認すべき。

②ミドル・シニアの活躍支援も必須

企業でボリュームゾーンを占めるミドル・シニアがいきいき働きくことは、企業の活力に直結する。

大きなポテンシャルを持つミドル・シニア社員を活かすための施策の一つとして、複業支援を検討することをお勧めしたい。もし、研修などの取組みをする場合は、会社・人事側の意図、狙い、想いを明確に。説明がないまま一方的なセミナーやられても、社員は疑心暗鬼になる。

 

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昨今、様々な企業において複業が解禁となってきていますが、複業禁止の企業については、改めて検討する時期に来ているのかもしれません。


第2部では、「外資系IT企業の社員」「プロコーチ」「薬膳事業の経営者」の3つの仕事を『複業』されている坂本洋樹さんに事例発表していただきました。

 

坂本さんは現在主に3つの仕事をされていらっしゃいますが、どれも自分が本気でやりたい仕事だそうです。

・外資系IT企業の社員:海外を飛び回ってビジネスをしたいという元々やりたかったお仕事

プロコーチ:ご自身がコーチングに出会い、コーチングの良さを体験したので、今度はご自分がプロコーチとして誰かの役に立ちたいという想いからプロコーチの仕事を始めたそうです

・薬膳事業の経営:もともとは奥様が国際中医薬膳士として日常の生活で病気にならないよう体質改善をしていくという仕事をされていたことをビジネス化。奥様が苦手だった経営、企画、営業、経理を坂本さんの強みで補う形で事業として、お二人で起業されました。

 

3つの仕事をしていると言うと「坂本さんは特別な人だから。普通の人にはできっこない」と思われがちですが、「自分は特別なわけでも能力が特別高いわけでもなく、ごく普通の人なんです」とこれまでの人生をキャリアチャートでご説明いただきました。

坂本さんの人生は順風満帆というわけではなく、大学を卒業して就職した後も好きな仕事、やりたい仕事ができずに悩まれていたそうです。そのため転職も2回。2回目の転職先では働くことが難しくなり2回休職するという経験もされました。そんな時「好きなこと、得意なことだけして生きていく」考え方に出会い、「これからは『好きなこと、得意なこと』だけを仕事にしよう」と思い、嫌なことを手放したら幸せになりました」と笑顔で話してくださいました。そう決意して3度目の転職で今の外資系IT企業で働くことになり、ほぼ同じタイミングでプロのコーチ、奥様との起業をされたそうです。

 

令和時代でしあわせに働くための『令和のルール』

就職氷河期世代で就職に苦労してきた坂本さんが考える、令和時代でしあわせに働くために大切にしていることは

have toをはがす(努力した弱みより簡単にできる才能に再フォーカス)

〇仕事=お金ではない(仕事とは「お金を払ってで もやりたい人の役に立つこと」)

〇我慢する親にならない(やりたいことで稼ぐ姿を見せることが一番の子育て)

〇成功か失敗かではない(挑戦の結果は成功か成長。 現状維持が1番の失敗)

〇自らの人生を生きる(社会や家族やお金を言い訳 にせず、素直に健気に自分 の人生の主人公であれ)

複業という働き方をしたことで、仕事の難易度は上がり、投下時間も増えたものの、「好きなこと」なので苦にならないそうです。むしろ経営者視点で物事を考えるようになり、会社員としての仕事もモチベーションが上がったそうです。また、付き合う人の半分以上が起業家や経営者となり、人脈が広がったことは起業家としても大きなメリットだそうです。

 

これから複業される方へのアドバイス

・収入源の追加にしないこと。

複業するにあたり、収入面で家族に迷惑をかけないこと。今の生活レベルは落とさないと

いう条件を自分に課したほうがいい。

本音でやりたいことをやりましょう。お金払ってでもやりたいことが趣味。その延長で人

の役に立つのが仕事です。

・複業以外の目標もたてましょう

仕事を増やして、家族や、健康 や、資産を犠牲にしては意味がありません。人生を良くする一部として複業もやりましょう。2児のパパでもある坂本さんは、お子さん2人を連れ3人で旅行に行かれるそうです。プライベートも仕事も充実されているようです。

会社という1つの組織に依存せずに、自分らしい生き方、働き方を『複業』という形で実現された坂本さんは、終始イキイキ笑顔で事例発表をしてくださいました。

今後は坂本さんのように『自分らしいしあわせな生き方、働き方』をめざして複業する方が増えてきそうですね。