2022年9月8日(木)開催 【第26回】 オンライン研究会レポート

障がい者雇用とジョブコーチの役割~ジョブコーチ養成講座を受講して見えてきた今後の取り組み~と題し、富国生命保険相互会社 ダイバーシティ推進室 昌宅由美子氏、村田あゆみ氏、野村容子氏の3名に障がい者雇用の歴史、障がい者雇用の取り組み、ジョブコーチとしての今後の取り組みの3つに分けてお話いただきました。

 

1.障がい者雇用の歴史

まず、富国生命が障がい者雇用に取組むきっかけとなったのは、法定雇用率が大幅に下がってしまい「雇い入れ計画書」の提出をした2009年からです。

ダイバーシティ推進担当として異動した昌宅さんは、あまりにも大きな計画に途方にくれたそうですが、障がい者雇用に会社として積極的に取り組む良いきっかけになったそうです。

2.当社の障がい者雇用

障がい者雇用の取り組み(20092011

まず、昌宅さんの時代に取り組む上での大前提は「各部署、各支社で1名以上の採用」を計画として掲げ、次の3つを推進していきました。まず1つ目は本社でプロジェクトチームを発足させ、各部門から管理職1名をメンバーとして選出し、定期的に会議を開催しました。会社としても障がい者雇用は初めてのことなので、障がい者就労支援センターの方にメンバーに加わってもらいました。障がい者雇用に対する理解、取り組みの具体的な方法、仕事の切り出しについて、プロジェクトチームで推進していきました。

2つ目は、東京、千葉の特別支援学校からの実習生の受入れ。2年生から実習を受け入れ、採用につなげていきました。最初、各部門から抵抗もありましたが、受け入れが進んで行くうちに好事例を共有することができ、徐々に本社内に広がっていきました。

3つ目は、各地で行われるハローワーク主催の面接会へ人事部の管理職が積極的に参加することで、現地の担当者も不安感なく面接、採用を進めることが出来たそうです。全社で取り組むこととして本社、支社の協力体制も出来ていったようです。

3年間で110名の計画は最終的には達成したとのことですが、目に見える数字より大切なことが残ったとしたら、障がいがある人が当たり前に職場にいるノーマライゼーションが醸成されたこと、障がい者雇用の土台がこの3年間で出来たことをこの3年間の総括とされていました。

 

障がい者雇用の取り組み(20182019

次に村田さんの時代の取り組みとしては、法定雇用率が2.2%に上がったことにより、再度、「雇入れ計画書」を提出することになり、2年間で75名を採用することになりました。

「各部署、各支社1名の採用」は当初より掲げていた前提ではありますが、それにプラスして次の3つのことを掲げました。1つ目はダイバーシティ推進室に障がい者雇用の特例部署を作っていくこと、2つ目は、精神障害者の方の受け入れも積極的に行っていくこと、3つ目は制度改正と評価制度の策定を行ないました。

2018年の4月は0名だったのが、 2020年の4月では29名をダイバーシティ推進室で受け入れ、採用はできたものの、仕事の切り出しが課題となっていたそうです。

生命保険会社は紙の会社と言われており、以前は結構仕事がありましたが、ペーパーレス化でどんどん仕事が少なくなっていきました。そこで、次の仕事として名刺作成と営業所の清掃業務の2 本柱で進めていきました。 特例子会社を見学させていただき、どうやって行けばいいのかを検討し、社内便や今現在コロナでの消毒作業等、毎日のルーチンワークで28名が毎日隙間なく働けるような形を考えていきました。

ルーチンワークに加えて、突発的に各部門から頼まれたりすることを請け負ったり、その部門に出向く派遣業務を重要視していました。 障がい者雇用に対してマイナスなイメージを持っていらっしゃる方が各部にもいますが、実際にダイバーシティ推進室から派遣することによって、思っていたよりもできる、活躍してくれている等の感想で最終的にはその部署にも異動ができるようになっていきました。

その他には、オリジナル作品を作る業務として英字新聞でエコバッグを作ったり、消毒液を置く台を各部署の前に置いて、皆さんに消毒をしてもらったり、手先の器用な方が活躍できる場所を作っているとのことです。次に個人個人のスケジュールや体調をホワイトボードで一括管理する工夫もしています。

ポイントとしては、名前の横に午前と午後の体調の申告をする欄を設けています。黄色が普通、ピンクは元気、ブルーは特に体調が悪いということを午前と午後に自分自身で貼ってくださいと指示をしています。

次に無期転換ルールの制度導入に伴って、早期無期転換制度と各職種のランクアップ制度を策定しました。早期の無期転換をした後にランクアップ制度でステップアップが可能になり、本人が希望すればエリア職へのチャレンジができるというような流れのステップを作りました。目標を持って仕事をしてほしいということで、半年ごとに行われる評価制度については2019年に創設されました。

この期間を振り返ると、当時、特例子会社や就労支援機関へ出向いて、当社に合う仕事は何があるのかを情報収集し、試行錯誤しながらやってきました。その時はそれが当たり前だと思ってやってきましたが、今振り返るとなかなかいい仕事をしたと思っているとのことです。

 

障がい者雇用の取り組み(2020~)

2020年のコロナ禍以降に始めた内幸町本社での取り組みについては次の通りです。

各種面談へダイバーシティ推進室の担当者が同席をする取り組みとして次の3つを始めました。コロナ禍、オンラインが会社でも普及したことで、全国の支社へ出向くことなく、取り組むことが出来たそうです。

➀支社採用面談への同席、②入社後の振り返り面談への同席、③支社在籍者との面談開始、次に勉強会の実施として障がい者雇用の知識を支社の担当者に知ってもらうための④内務次長勉強会(好事例の発表)、⑤新任内務次長勉強会を実施し、これにより、障がい者雇用への理解が進み、積極的な採用活動へとつながりました。

次に⑥社内ダブルジョブの開始として、内幸町本社に在籍する業務サポート9名が2~3名のチームを組んで、事務用品の配付、用紙補充、トナー回収、シュレッダー袋の配付を全体に配付する仕事を開始しました。普段は各自、所属の仕事を行なっていますが、業務サポート同士で仕事をすることにより、チームワークを醸成することや新たな仕事を覚えて出番が多くなり、活躍の場面が広がることを期待しています。

⑦特別支援学校からの実習生の受け入れ(支社・本社)は以前からも継続して行っていることですが、昨年から本社だけではなく、支社での受け入れも開始しています。⑧就労移行支援機関からの受入れ~入社(支社)については、今後も本社、支社で積極的に推進していくことになります。

 

3.ジョブコーチとしての今後の取り組み

ジョブコーチとしての取り組みとして、ジョブコーチ活用ガイドには「障がいがある社員が職場に適応できるように支援を行う」とあり、色々な機関と連携を取って支援を行っていくとあります。今までも1担当者として、支援を行ってきましたが、今回、内幸町本社と千葉ニュータウン本社にそれぞれ、1名ずつのジョブコーチを配置して活動をしていくことになり、今後の取り組みとして次の3つを掲げています。

1. 定期的な面談による状況の把握(本社・支社)

◎年度始に優先順位を決めて実施(例:新任次長配属支社)

本社に所属している方には今までも手厚く面談を行っていましたが、支社については、支社任せになっており、ダイバーシティ推進室で現状がわからないまま、退職に至るケースもあったことから、支社に所属している方の面談も積極的に行っていくこととしました。例えば、4月から始めていることとしては、新任次長が配属された支社に所属する方を優先して面談し、新任次長へ障がい者雇用への理解をしてもらうよう実施しています。

.ナチュラルサポートの構築

職場の上司や同僚による支援にスムーズに移行できることを目指す

ナチュラルサポートとは、障害がある人が働いている職場の上司や同僚が職場内において障害のある人が働き続けるために必要なさまざまな支援を自然もしくは計画的に提供するることです。この自然というのは従業員が自発的に自然にサポートを提供すること例えば手助けする、教える、褒める、励ますなど、障害者と他の従業員との日常的な関りの中で最も理想的なサポートです。このナチュラルサポートができるようになれば、もうジョブコーチというのはその関係を見守っていって何か問題が生じた時に介入すれば良くなる。そのためには事業所内にキーパーソンとなる支援者、応援団などを育てていって職場の上司や同僚による支援にスムーズに移行できることを目指していきたいとのことです。

.所属への啓発活動

ジョブコーチの存在を社内に広くアピールする 

「企業在籍型ジョブコーチ」をダイバーシティ推進室所属員が取得したことを、積極的にアピールし、困りごとがあったら気軽に相談できる体制にしていくことを意識し、社内に広く存在をアピールしていくそうです。

 

次にジョブコーチの気づいたこととして、今までは担当者として障がい者雇用の活動はしていましたが、これからは会社の障がい者雇用を担う存在のジョブコーチなんだっていうことを自覚すること、次にジョブコーチとして何ができるのかということを考え行動する、そして、それを修正してやってみてどうだったかをまた、振り返ってまたやってみるっていうこのサイクルを回していくこと、まさに先ほど、トライ&エラーいう話がありましたが、トライ&エラーして、ジョブコーチも成長していく、そして、ご本人たちも成長していくこのトライ&グロースのサイクルを回していきたいとのことです。

 

最後に10月に移動する村田さんからジョブコーチ2人に対して、期待の言葉として、

「今までは、個人の力量だとか独学で学んだことに頼ってきたところが多かったですが、2人がきちっと勉強して資格を取ったので、ナチュラのサポートを広めていくという活動をしていただければと思っています。是非がんばってください」とジョブコーチのお二人にエールを送って締めくくりました。

昌宅さん、村田さん、野村さんの3名は障がい者雇用に対する熱い思いを持って、今までも活動されている様子がとても伝わってきました。ジョブコーチの資格を取ったお二人がこれから中心になってさらにフコク生命の障がい者雇用が進化、成長していくことが今から楽しみです。

 

―文責 高久和男―