2021年10月22日(金)
令和時代に必須の『セルフ・キャリアドック』と社内キャリアコンサルタントの役割
事例発表:国立研究開発法人 産業技術総合研究所
イノベーション人材部 ダイバーシティ推進室
室長 大谷 加津代様、林 理江様、井出ゆかり様

【第1部】
まず初めに、本日のファシリテーションを担当する臼井より、皆さまの企業・組織のダイバーシティ推進・働き方改革について、アンケート結果の共有が行われました。

Q1.現在、在宅ワークやリモートワークが行われていますか?
①基本的に在宅:11%
②週3日~4日:21%
③週1日:42%
④行っていない:26%
という結果でした。「週3日~4日」と「基本的に在宅」の合計が32ポイントであり、前の52%と比べ減少していました。
Q2.-1 「セルフキャリアドック」制度を導入していますか?
①導入している:5%
②計画中:5%
③導入していない:74%
④分からない:16%
「導入している」が1社、計画中が1社。健康宣言の中でチームが発足。その中でセルフキャリアドックを導入予定とのことです。

Q2.-2 「セルフキャリアドック」制度を導入しているという会社(組織)様にお伺いいたします。
 「セルフキャリアドック」は、従業員の主体的なキャリア形成の促進に効果的であると感じますか? 
①効果的である 
②やや効果的である:100%
③どちらともいえない 
④効果的でない 
⑤分からない 

Q3.人材育成ビジョンや方針が策定されていますか? 
①策定されている:58%
②計画中:25%
③策定されていない:11%
④分からない:5% 
策定されている、計画中を含めると82%が人材育成ビジョンを策定されていました。

Q4.キャリア研修を実施していますか?
①指名(階層、年齢など)参加の研修がある:52%
②手上げ式の研修がある:16%
③計画中:16%
④実施していない:16%
⑤分からない:0%
指名制の研修が半数以上を占めました。手上げ式だと参加者が減少したということも伺えました。

Q4-2キャリア研修を実施しているという会社(組織)様にお伺いいたします。
対象者はどのような層でしょうか。(複数回答可)
①新入社員:6
②若手社員(20代~30代前半):10
③ミドル社員(30代後半~40代):8
④55歳前後:9
⑤女性社員:3
⑥産休・育休復帰者:2
⑤その他:1 
⑥分からない:1 
若手社員、ミドル社員、55歳前後にキャリア研修に複数回答が見られました。

Q5.キャリアコンサルティング/カウンセリングを受けられる窓口・仕組みはありますか?
①ある:0% 
②計画中:21%
③ない:74% 
④わからない:5%
窓口、仕組みがない企業が74%ですが、21%は計画中との回答がありました。

Q6.社内のキャリアコンサルタント(国家資格保有者)が活動していますか?
①活動している:5%
②少し活動している:16%
③計画中:5%
④活動していない:58%
⑤わからない:16%
資格保有者はいるが、具体的な活動につながっていないとの回答がありました。

Q7.社員のキャリア形成支援に関して課題がありますか?
①ある:53% 
②ややある:42% 
③ない:0% 
④わからない:5%
 課題が「ある」「ややある」が95%を占めており、経営層がキャリア形成支援の必要性を感じていないとの回答がありました。

Q8. あなたの職位は
 ①経営職(取締役・執行役員):11%
②上級管理職(事業部長、部門長):5%
③初級管理職(課長、課長代理):26%
④一般社員:53% 
⑤その他:5%

Q9.現在、在宅ワーク、リモートワークをしていますか?
①基本的に在宅ワーク
②週に数日在宅ワーク 
③していない
 
Q10.あなた自身、「セルフキャリアドック」制度の必要性を感じていますか? 
①感じている:37%
②やや感じている:32% 
③どちらともいえない:10%
④あまり感じていない:0% 
⑤感じていない:0%
⑥分からない:21%
参加者ご自身は、「セルフキャリアドック」の必要性を感じている方が70%近くいました。
制度としてできなかったとしても、研修やカウンセリングで自分のキャリアを考える機会を支援する仕組みは必要だと思うという意見がありました。

Q11.キャリアコンサルタントの国家資格取得に興味がありますか?
①資格を持っている:32% 
②取得中:16%
③興味はある:42%
④興味がない:0%
⑤分からない:10%

【第2部】
第2部は、国立研究開発法人 産業技術総合研究所 イノベーション人材部 ダイバーシティ推進室 室長 大谷 加津代様、林 理江様、井出ゆかり様より「令和時代に必須の『セルフ・キャリアドック』と社内キャリアコンサルタントの役割』」と題し、ご講演いただきました。

1.産総研とは(1,2ともに大谷室長より)
産業技術総合研究所(以下、産総研と略させていただきます)は、国内に3法人ある特定国立研究開発法人の一つで、人員は約10,000名以上、拠点は日本全国に11研究拠点、7つの研究領域にまたがる広範な領域の研究を行っています。

2.産総研のダイバーシティの沿革
産総研のダイバーシティの歴史は古く、2001年に「女性職員の採用・登用拡大計画」が立てられ2006年には「産業技術総合研究所 男女共同参画宣言」を掲げ、「男女共同参画室」が設置されました。(その後、2011年に「男女共同参画室」をは「ダイバーシティ推進室」と改名)
2007年に文科省の「「女性研究者グローバルエンカレッジング」という事業を立ち上げ、「楽しく自信にあふれた女性研究者数を増加させる」というビジョンのもと、「ダイバーシティ・サポート・オフィス」というコンソーシアムを立ち上げられました。このコンソーシアムでは、つくば地区にある他機関や、他省庁の研究機関・大学が集まり、組織を超えて女性研究者支援に取り組み、課題を共有し、支援策の検討が行われてきました。このコンソーシアムは、現在でもパートナーシップ体制として連携して、支援を継続されています。

そのコンソーシアムにおける女性の「意欲触発支援」として、2007年~2008年の2年間で「女性職員エンカレッジ研修」(2日間研修+個別キャリアカウンセリング)が全4回実施されました。研修は非常に好評で、当時の受講者のうち約3割が現在管理職になられ、大谷室長もそのうちのお一人とのことです。今は女性管理職育成の機運は高まっていますが、当時は、そこまでの機運がない中で、先進的な取り組みがされていました。
併せてキャリアカウンセリングが制度化され、外部の専門家に定期的に来ていただき、相談に乗っていただく仕組みができました。一方で所内におけるキャリアカウンセラーの養成も行い、5名の職員がキャリアカウンセラー資格を取得されました。大谷室長も、キャリアカウンセラーの仕事を理解したいという想いから資格を取得されたそうです。大谷室長がキャリアカウンセラー取得にあたって学んだ傾聴の重要性やスキルは、今の管理職としての業務にも生かされているとのことです。
所内キャリアカウンセラーの一人は、のちにイノベーションスクール(大学院生・ポスドク支援)やダイバーシティ推進室でのキャリア相談業務等で活躍されているそうです。

こうした取り組みの結果、女性研究職員採用比率、女性管理職比率、女性研究職員在職比率、すべてが着実にアップしてきています。

今後のアクションプランは、「ワークバランスの実現」「女性職員の活躍推進及び女性研究者の採用拡大」「外国人研究者の採用・受け入れ支援および活躍支援」「キャリア形成支援」「ダイバーシティの総合推進」に関する推進策に基づき、策定されており、引き続き男女や国籍などの別にかかわりなく個人の能力を存分に発揮できる環境の実現を目指しています。

3.産総研のセルフ・キャリアドック
全所的な人材育成の取組として、階層別研修(新人、中堅、グループ長等)でのダイバーシティに関する講義、キャリア形成支援研修、女性エンカレッジ研修を実施しています。
個々に寄り添ったキャリア形成支援として、外部専門家によるキャリアカウンセリングのほか、育休復帰者面談などは職員がサポートされています。

3-1キャリア形成支援研修(林様より)
キャリア形成支援研修は研修とフォローアップカウンセリングを組み合わせたもので、以前は2日研修でしたが、今はオンラインの半日研修を実施しています。男女混合クラス、女性のみのクラスを年1回ずつ開催しています。
キャリア形成支援研修のテーマは、毎年実施する研修時に行うアンケートにおいて受講者のニーズを把握し、かつ所内の方針を鑑みた上で決定しており、本年は、男女混合クラスがコミュニケーションと心のプロセス、女性のみのクラスがキャリアデザインをテーマに実施いたしました。
参加者は手上げ方式で、年齢層も様々です。男女混合クラスは男女偏らないくらいの男女比率の職員が参加されています。毎年満足度も高く、参加者から好評で、口コミで参加される方もいらっしゃいます。

3-2キャリアカウンセリング(3-2,3井出様より)
キャリアカウンセリングは、産総研で勤務されている方は、どなたでも無料で利用できる仕組みで、外部の専門家が面談を行います。
皆さんに気軽に利用していただくために、「キャリアカウンセリングのご案内」というリーフレットを作成し、掲示したり、持ち帰れるよう複数設置したりすることで、皆さんが情報を得やすいように工夫をされています。

3-3復帰者面談
妊娠された方や出産後に復帰された方が、産休・育休の取得や復帰をスムーズにできるよう、ダイバーシティ推進室の担当者が個別に相談に乗り、制度などを紹介する「いらっしゃい赤ちゃん相談 産総研版」という取り組みを行っています。
また、研究職の皆さんにアンケートを取る中で、勤務中に時間がなくて情報共有もできないということが分かったため、横のつながりをつくり、気軽に情報交換する目的で、ランチ会も開催してきました。お昼休みに開催することで、お弁当片手に、予約なしで気軽に集まることができます。
現在はコロナ禍のため、集まってランチを食べることができないためオンラインで実施しており、昼休みにZoomをつなぎ、皆さんでランチを食べながらオンラインでお話をしています。これから初めてお母さん・お父さんになる方は不安も大きいですが、このような場に参加して、先輩お母さん・お父さんに話を聞くことで、子育てや両立のイメージをつかうことができ、非常に役に立っています。

井出様の、“研修は年数回しかできないので、日常的につながりをサポートしていくことが自分たちの使命だと思っている”というお言葉が非常に印象的でした。

4.今後の活動・課題(大谷室長より)
研修、ランチ会などの場の提供、キャリアカウンセリング等、それぞれ違った支援の仕方でうまくシナジー効果を出し、職員の役に立てるような、個々の課題や悩みに寄り添った支援を充実させていきたいとお考えです。
また、役職定年後、定年退職後の方々が増えていくことから、そういった方にもキャリアコンサルタントとして活躍し、後輩職員たちの支援をすることで、ゴールド人財を目指してもらいたいという想いも語ってくださいました。

大谷様、林様、井出様、貴重なお話をありがとうございました。

(文責:昌宅由美子、臼井淑子)

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