2021年9月10日(金)「令和時代に求められる団塊ジュニア世代のキャリアと働き方~55歳にキャリアデザイン研修を実施する狙い~」
事例発表:ホシザキ株式会社
人事部人材教育課 キャリアコンサルタント
坪井 加寿代氏
人事部人材教育課 アドバイザー兼講師(ゴールド人財)
波多 勝司氏

【第1部】
まず初めに、本日のファシリテーションを担当する昌宅・高久より、皆さまの企業・組織のダイバーシティ推進・働き方改革について、アンケート結果の共有が行われました。

Q1.「現在、あなたの企業・組織では在宅ワークやリモートワークをどの程度行っていますか?」
①基本的に在宅:22%
②週3日~4日:30%
③週1日~2日:35%
④行われていない:13%
⑤わからない:0%
という結果でした。1か月前は「週3日~4日」と「基本的に在宅」の合計が44ポイントであり、今月はやや増加して52%でした。

Q2.「55歳以上の人たちの働き方は20~40代の人たち(女性、男性)のロールモデルになっていますか?」
①なっている:0%
②少しなっている:26%
③なっていない:44%
④個人差があり:13%
⑤わからない:17%
という結果でした。「こんなキャリアを築きたいと思える50代はいない」「知識や経験は尊敬されるが、目標をもって活き活きと働く姿が見られない」というコメントが寄せられました。

Q3.「役職定年制度がありますか?」
①ある:52%
②計画中:0%
③かつてあったが今はない:5%
④ない:39%
③分からない:4%
という結果でした。

Q4.「役職定年になった人たちの働く意欲・モチベーションは役職当時に比べて?」
①高い:4%
②やや高い:0%
③様々:57%
④低い:13%
⑤わからない:26%
という結果でした。コメントとして、「以前と変わらずイキイキしている方もいれば、一線を退き仕事や役割をセーブする方もいる」「賃金カットで同じ仕事であることが不満のようだが、制度的に妥当であるから、静かに働いていただきたい」等があがりました。

Q5.「定年退職は何歳ですか?」
①60歳:87%
②65歳:13%
③70歳:0%
④定年がない:0%
という結果でした。

Q6.「定年後再雇用で働き続けている人は、ここ3年で増えていますか?」
①増えている:52%
②少し増えている:13%
③変わらない:18%
④減っている:4%
⑤わからない:13%
という結果でした。コメントとして、「8~9割が再雇用を希望している」「今年度より70歳までの雇用延長制度を導入。 60歳を超えての再雇用率はほぼ100%」等があがりました。

Q7. 「定年後再雇用で働き続けている人たちの働く意欲・モチベーションは定年前に比べて?」
①高い:0%
②やや高い:4%
③様々:57%
④低い:30%
⑤わからない:9%
という結果でした。コメントとして「給与の低下やポジションの降格で元気がなくなる」「年金までのつなぎの意識」「働ける喜びがある人と、そうでない人との差がある」等があがりました。

Q8.「50代半ば&後半(54歳以上)の人達を対象にしたキャリア・モチベーションの施策を行っていますか?」
①行っている:26%
②検討・計画中:26%
③行っている:44%
④わからない:4%
という結果でした。コメントとして「55歳社員を対象としてキャリアデザイン研修を実施」「会社の平均年齢が上がっていく中で、50歳台前後の社員に向けたモチベーション向上の研修を検討中」等があがりました。

その他、回答者ご自身に伺った質問において
Q9.「あなたは何歳まで働き続けたいですか?」
①できる限り早く辞めたい:4%
②60歳まで:4%
③年金受給年齢の65歳前後まで:22%
④70歳まで:13%
⑤生涯現役で働き続けたい:35% 
⑥わからない:22%

Q10.「あなたの周りに、55歳以上で働き続けている人の素敵なロールモデルがいますか?」①いる:35%
②少しいる:22%
③いない:35%
④わからない:8%
という結果でした。半数以上の57%の方は、55歳以上で働き続けているロールモデルがいらっしゃる状況が伺えました。

【第ニ部】
 第2部ではホシザキ株式会社にお勤めの坪井さん、波多さんから、「令和時代に求められる団塊ジュニア世代のキャリアと働き方~55歳にキャリアデザイン研修を実施する狙い~」と題した事例発表をしていただきました。

1.ホシザキと人材教育課について
ホシザキ株式会社は1947年(昭和22年)に創業され、ペンギンマークでお馴染みの製氷機、冷蔵庫、食器洗浄機をはじめとする各種フードサービス機器の研究開発および製造販売を行っており連結子会社は国内17社、海外33社に展開されています。 
今回、発表いただく55歳のキャリアデザイン研修の対象としては、ホシザキ本社、本社工場、島根工場に勤務の55歳の方が対象ということです。
ホシザキさまの人材教育課の体制としては坪井さんを筆頭にゴールド人財の波多さんはじめ、男性4名、平均年齢54歳の体制で国内グループ会社向けの人材育成関係業務を行っています。

2.当社における55歳(キャリアデザイン)研修の必要性
①当社がキャリアデザイン研修を実施した背景
キャリアデザイン研修を実施した背景として年齢構成人員が揚げられました。42歳~60歳の構成人員が厚いという特徴があり55歳以上の働き方、モチベーションが組織運営に影響しているとのこと。例えば、当事者の方たちに聞いたところ、役職定年を迎え、今までと同じようにならないから居心地が悪い、部下の部下になることが本音では受け入れられない、誰も言うことを聞いてくれない、やっても何も変わらない、ちょっと面倒くさい存在になっている気がするという意見が出てきたそうです。かたやメンバーの方に聞いたところ、今までの経験や知識を活かしてほしい、かっこよくいて欲しい、今までと変わらず頼られる存在でいて欲しいという意見が聞かれたそうです。

②キャリアデザイン研修の狙い
当事者の方たちとメンバーとの間にギャップがあり、メンバーからもどう接してよいかわからないという声があったので、研修の内容としては、
(1)会社と自分自身を取り巻く環境変化や定年(役定)以降の働き方を意識し、前向きなキャリアの方向性やありたい姿を描く
・これまで培ってきた経験や能力を整理し自己肯定感を高める 
・仕事へのモチベーションを高める
(2)ライフマネジメントの重要性を認識し、ライフプラン・マネープランの立て方の基礎知識を習得する
・公的年金制度や公的介護保険制度について基礎知識を習得する
この2本の柱を中心に研修を企画されたそうです。実施年度は2014年から開始し、2014年、2015年は45歳、50歳、55歳~58歳2016年以降は55歳に絞っての研修となりました。
2020年はコロナの影響で本社地区のみ、2021年は島根地区のみの実施となり、内容については、2019年までは1.5日から2日をかけて、自己分析、強み、弱みを発掘し、ライフプラン、マネープランを先生の指導のもと、自分でこの先はどうしていくかを考えて作っていくそんな研修です。イメージとしては、仕事軸での自己分析、マネープランに軸をおいた内容で、参加者からはすごくためになったとの声が上がる一方、具体的な行動に繋がらなかったように感じていたとのこと。そこで2020年からは、検討の結果、QUEのカリキュラムに変更しました。坪井さんがピタッと来たのは、難しいことを頭で考えて研修するのではなく、本人が気づいて変らなくちゃいけないところに重きを置いた研修だったのと、講師のサラリーマン人生や実体験を踏まえて話すこと、そこにひかれて依頼することになったとのことです。受講者は何か自分が、変わらなきゃいけないなっていう気づきが得られ、2020年は対面研修だったが、研修が終わって出てきた受講生が「今日は楽しかった!」っていう声が上がっていて心に響いた研修となったようです。
2021年はコロナの影響で、オンラインでの実施となりました。しかも、オンラインで1日コンパクトにまとめ、マネープランは割愛していますが、受講生の気づきは、昨年と変わらずしっかり伝えることが出来たとのことでした。

③キャリアデザイン研修実施の苦労話
そして、キャリアデザイン研修実施の苦労としては、いまさらキャリアデザイン研修なんてと思う人がいたり、同じ所属で複数名出せない、キャリアデザイン研修の自主的辞退の申し出があったり、研修に参加するのはいいけど、課題は勘弁してほしい等々、参加してもらうための苦労は多くあったそうです。
そして、コロナになって初めて取り組んだオンライン研修ですが、現場作業の方なので、普段、勤怠でしかパソコンを使わない人も多くいたそうです。
そんな中、会場を準備し、パソコンを一人1台準備する等あらゆることを一人一人に確認していくことになりました。
なによりも受講生が不安に思っていたのは、「ZOOMって何?」っていうところからなので、立ち上げは総務にお願いし、操作はガイダンスで丁寧に教えていただき、安心して研修に入って行けたそうです。
そして、何よりも同期として会社に入ったものの何十年も会ってないような方と一緒に参加でき、島根工場は2年分の研修だったので、高校のときの先輩と同じチームになって話す場面を見ていて、坪井さんは担当者として、そんなつながりもいいなあと感じたようです。

④受講者の反応
アンケートの振り返りとしては、2019年は、同年代の仲間と話が出来てよかった、マネープランを作成し将来どのくらいの資金が必要なのか理解できてよかった、定年後の生活を考えるきっかけになった等、いいきっかけにはなったが、今後、職場でどのように働いてほしいかというところは、なかなか難しかったと坪井さんは感じているとのこと。2020年2021年については、楽しかった、眠くならなかった、講師の経験はわかりやすく、為になった、研修の中に出てくる言葉の人財、ゴールド人財、雇用される能力に共感を得て、チャレンジする勇気をもらった等、参加者にささる言葉がいくつもあったことは、今回の収穫であり、参加者の方が変わろうとするきっかけになったと感じたそうです。職場では55歳以上の人もどうしていいのかわからない、職場のメンバーもどう接していいのかわからない、この溝を埋めることが出来るんじゃないかと感じているとのことです。
現状と今後については、この世代の人数ボリュームが多い状態はまだ続く、この階層の元気やイキイキは組織にとても大きな影響を与えるとの考えから、変化に気づく受け入れるためのきっかけ作りをしていくことが人材教育課の成すべきことと考えている、そのうえで願いとしては、自分も周りも大切にできる頼れる先輩でいてほしい、変化に立ち向かう勇気と柔軟性を持ってほしい、ここを55歳のキャリア研修で気づいてほしい、そして、目標としては、今までと変わりなく、組織の一員として何事も前向きに、みんなのアニキ、メンターとしてどんどん活躍してほしい、イキイキ働いてほしい、これが私たちの願いですという坪井さんの研修に対する熱い思いが伝わってきました。
55歳研修を通じてシニア社員と職場のイキイキを応援していく、今後も55歳の研修継続していく予定ですという坪井さんの力強い言葉で締めくくられました。

3.当社のゴールド人財(波多勝司氏)
Part2ではアドバイザー兼講師の波多さんから『「ゴールド人財」を「オールド人材」にしないために ~定年間近、定年後の社員の働き方を考える~』と題して登壇して頂きました。
波多様は現在64歳。1980年に宮城県にある星崎東北(現ホシザキ東北)に入社されました。10年の営業職の後総務課に異動となり、採用・教育・企画の三足の草鞋を履いていましたが、2006年に教育専任になられます。その後2008年に愛知県にあるホシザキ本社に出向となり、人材教育課に配属になります。ただし自席はホシザキ東北のままで、月2回の打合せでホシザキ本社に出張したり、各拠点での研修の際に現地に赴いたりする生活だったのですが、2011年にホシザキ本社に単身赴任することになります。そして2017年の定年退職と同時に、ホシザキ本社に移籍し嘱託社員になるのですが、会社からの配慮もあり「勤務地はホシザキ東北でいいよ」ということになり、久しぶりに家族と生活が出来るようになったそうです。そして2019年に嘱託社員の身でいらっしゃるのに、再度ホシザキ本社へ単身赴任し、現在に至っています。
因みに、グループ各社にも教育部門はありますが、実務教育が主体で、ビジネススキルやパーソナルスキルなどの研修はホシザキ本社の人材教育課が担当しているため、全国にあるグループ会社などは研修の必要性があった際に本社に依頼しているそうです。

波多さんが定年退職された時の状況としては、
・所属会社がホシザキ東北からホシザキに移籍した
・勤務地が出向先のホシザキ本社(愛知県)からホシザキ東北(宮城県)へ変更になった
・6年ぶりに宮城県で家族と同居できた。娘さんがまだ高校2年生だったので、まだまだ働かざるを得なかった。
・業務内容は定年前と同じ人材教育の仕事だった
ということで働くことに対して前向きであり、モチベーションなんか低下するわけがないと思っていたそうです。ところがモチベーションが下がってしまったそうです。その理由を考えてみると2つの変化があったからではないかと分析されています。当然判り切っていたことなんですが、と前置きされたうえで
●1つ目:待遇面
変化1:社員から嘱託へ → 「おめでとう」の言葉に定年を意識。社員ではなくなったことへの寂しさ。
変化2:年収ダウン → 給与明細を見てショック。ボーナスがもらえないのはもっとショック
変化3:一人で仕事 → 本社から帰ってきた人ということで一目置かれる。仕事の裁量は任せてられていたが、仕事を共有する人が居なく話し相手が少なく疎外感があった
●2つ目:精神面
変化1:張り合いがない → 仕事仲間が傍らに居ない、仕事に追われない、指摘する人も居ない
変化2:年収見合いの仕事をすればいい → 仕事量をセーブしようとする後ろ向きの気持ちが出てきた
変化3:いざとなれば会社を辞める選択肢もあるかな? → 退職金もあるし、ローンは終わったし…

では、どのようにしてモチベーションを持ち直すことが出来たのでしょうか。こちらも2つの理由があったのではないかとおっしゃっています。
●1つ目:就業環境
変化1:勤務地の変更 → ホシザキ本社へ再度単身赴任した。人材教育課への職場異動者や中途採用者への教育が必要だった。
変化2:業務内容の変化 → 率先して業務を行わないと仕事が回らない。責任と業務量が増加した。
変化3:研修スタイルの変化 → 集合研修からオンライン研修へ。オンライン研修は未知へのチャレンジだった。
●2つ目:仕事に対する意識
変化1:仲間と仕事する楽しさ → 一人仕事では味わえない一体感があった。
変化2:自分の存在価値を再認識 → 期待される・頼られることによる「やりがい」を実感。
変化3:挑戦することへの楽しさ → オンライン研修スキルの習得による満足感・達成感を味わえた。
変換4:教えることの楽しさを再認識 → オンラインは想定以上に満足度が高い。回数や受講者も大幅増した。
ことではなかったかとおっしゃっていました。

最後のまとめとして
・定年を迎えた社員は皆「ゴールド人財です」なぜなら、誰もが豊富な経験と知識・スキルを有しているからです。
・ところが、私の経験を踏まえると定年を機に周囲も自分自身も「嘱託」というレッテルを意識しだします。すると、どちらともなく役割や仕事の仕方を変えようとします。それが「ゴールド人財」から「オールド人材」への変化を促し、いつしか「オールド人材」に固定してしまいます。
・よって、「オールド人材」にしない工夫、「ゴールド人財」のままでいてもらう工夫が必要となります。

1.権限や裁量権は無くとも、仕事の責任は持ってもらう
2.他の社員と区別せずに、同じ仕事(量)をやってもらう
3.一人仕事ではなく、チームとしての仕事をしてもらう
4.新しい仕事にもチャレンジしてもらう(機会を与える)
5.期待と信頼を寄せる(できるだけ言葉や態度で示す)
この5点が波多さんの経験から導き出した「ゴールド人財」のままでいてもらうための工夫ではないかいうことでした。ここでマズローの欲求ご段階説にも触れ、やはり人間は給料とか役職と言った物質的欲求から、精神的欲求を求めていくんだな、と、今回の登壇のためにご自身を振り返えられて改めて実感されたそうです。

最後に「今日の話はあくまで私個人の体験をもとにしておりますので、すべての人が同じ考えを持つとはとは限りませんが、定年後はどういう仕事をしたいのか、会社としてどういう仕事を期待しているかと言うことを、しっかりと話し合うことは大事ではないかというふうに思っています。「定年後はこういう仕事ですよ」と決められてしまうと、ちょっとモチベーションが下がるのではないかと思っています。」とのコメントを頂きました。

坪井さん、波多さん、貴重なお話をどうもありがとうございました。

(文責:臼井淑子、昌也由美子、高久和男)
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