2021127日(水)
令和時代の働き方改革「会社の枠を超える」
~ロート製薬のダイバーシティ推進&働き方改革への取り組み20年~
事例発表:ロート製薬株式会社 人事総務部 マネージャー 山本 明子氏

【第1部】
2021年初の研究会はロート製薬株式会社の山本さまを事例ゲストにお迎えし、社会情勢と共に変化が見える兼業・副業について活発な意見交換が行われました。まず初めに、主催者である植田より、皆さまの企業・組織の兼業・副業状況について、アンケート結果の共有が行われました。
Q. 就業規則で社員への兼業・副業を認めていますか?」については、“容認している”が17%、驚いたことに“禁止している”との回答が65%となりました。続いて「Q. 兼業・副業に関する就業規則について」の質問では、“認める規定がある”という会社は12%となり、政府が兼業・副業を推奨しているのに、“就業規則の中で禁止事項がある”と答えた会社が41%ありました。「Q. 実際に兼業&副業している人がいますか?」については、“いる、少しいる”で42%となり、実際に実施している会社もあるようです。

Q. あなたの会社は10年後、終身雇用的な安定雇用を続けられる可能性は?」については、“高い、やや高い”を合わせても35%、つまり、65%以上が終身雇用的な安定雇用というのは厳しいと感じているようです。「Q. 兼業・副業は会社にどんな影響を与えるでしょうか?」では、“良い影響、やや良い影響を与える”が53%となり、その理由としては、“社外や部門外との良い関わりがモチベーションアップ、生産性の向上につながる”、“情報収集ができる”、“新たなスキルの取得が取得できる”などが挙げられました。「Q. 兼業&副業を推進するために、問題・課題はりますか?」については、“本業がおろそかになる懸念”、“労働時間、社会保険等の問題”、“兼業&副業を認め、応援する文化が醸成できていないと難しい”などのコメントがありました。

今回の回答者の年齢層は70%以上が40代、50代の方々、という中で、「Q. 今の会社で年金受給連例まで働き続けられると思いますか?」については、“思う、やや思う”が約70%だったことから、40代、50代の方々は、今の会社で定年まで働き続けられると考えている傾向がわかりました。

 

【第2部】
2部ではロート製薬株式会社にお勤めの山本さまから、令和時代の働き方改革「会社の枠を超える」~ロート製薬のダイバーシティ推進&働き方改革への取り組み20年~と題した事例発表をしていただきました。

ロート製薬は1899(明治33)に胃薬「胃活」の販売で創業され、その後、目薬「ロート目薬」や、皮膚用薬「メンソレータム」など、テレビCMでもお馴染みの商品を多数製造販売されていますので、みなさんもご存じのことと思います。

ロート製薬のダイバーシティへの取組は1995年に遡り、「男女世代なく対等な議論を生むために」女性の制服&役職呼称の廃止、オープンオフィス化(物理的&心理的障壁の払拭)さん付け運動とロートネームを実施。さらに2000年には、「主体性と自立、自分事化をねらって」新人事制度(RohtoWay)自己申告書&ランクアップチャレンジ制度、⑥ARK(明日のロートを考える)プロジェクト、を次々と実施されました。

①の「女性の制服&役職呼称の廃止」は、現在では多くの企業が取り入れていると思いますが、当時は最前線の取組だったのではないでしょうか。の「オープンオフィス化」は社長室や会長室も廃止し、部屋や壁のないワイワイガヤガヤ議論ができる空間を目指したものだそうです。「なるほど!」と思ったのは、役職者は奥の窓側ではなく、通路側に席を置くということです。何か起こった時に、すぐに集まってディスカッションすることで問題の早期解決に結びつけているそうです。の「さん付け運動とロートネーム」は対等な議論を生むための仕掛け作りのひとつとなり、参考に見せていただいた資料では、山田邦雄会長の社員証にも”くにおさん”と併記されていました。⑤の「自己申告書&ランクアップチャレンジ制度」は、自分のキャリアは自分で考えましょうと言う考えで、挙手制の昇格制度です。自分が昇格したいと思った年に手を上げないと昇格はしない制度(まずは自分で手を上げないと昇格審査にも乗らないという意味です)なので、昇格のスビートが早い人・全くしない人など様々で、年下の上司などは当たり前になっているそうです。の「ARKプロジェクト」はロート製薬の考え方の肝になる施策です。若手を中心とした人たちで、今後のロート製薬はどうあるべきか、何を変えたらいいか、を自分たちで考えて提言させる、そしてそのことが、自身の成長に寄与するという考え方です。さまざまなプロジェクトが実施されており、会社に来るだけで健康になれるといいよね、という考えから生まれた健康企業プロジェクトなども、ARKプロジェクトのひとつです。

そして、本日登壇いただいたメインテーマとなる④の「新人事制度」についてですが、ロート製薬さまでは複業のことを「社外チャレンジワーク」、兼務のことを「社内ダブルジョブ」と呼んでいます。

「社外チャレンジワーク」の対象者は、社会人3年目以上の正社員(中途入社者も可)となり、「健康を害するような働き方はNG」、「社会通念上の倫理感を外れるものはNG」、「情報漏洩につながるものはNG」などの条件や、「就業時間外の時間を利用して実践」、「人事への届出制で届出書類には目的、内容、頻度など詳細を記入」などのルールが決められています。

プライベートの時間を使って働くので条件・ルールを外れていなければ基本的にOKとのこと。書類に目的や内容を書いてもらっているのは、就業規則に「成長を目的とした場合のみ、副業を許可することがある」と書かれているため、お金目的のことが書いてあると、人事部から「違うんじゃないですか・・・.」と伝えることもあるそうです。

「社内ダブルジョブ(兼務)」の対象者は、社会人3年目以上の正社員となり、異動時期に関係なく人事に自己申告することができます。ルールとしては、「部署間の仕事の割合は両部署と相談」「半期ごとの評価は元部署が最終決定」というもので、最近では自分で両部署間と話し合いをつけて、事後報告で人事に言ってくることもあるとのこと。

また、部門人員が不足した時に、キャリア採用や派遣社員で補うのではなく、キャリアの幅を広げることもできるため、公募で社内ダブルジョブを募ることもあるそうです。

複業・兼務が生まれた背景は人事改革プロジェクトに手を挙げたメンバーが紆余曲折を経て導きだした結論でした。世間で通用する人材に早く成長したい、一度きりの人生!やりたいことをやりたい、「倍量倍速の二刀流で成長したい」ということで副業・兼務の制度が決まったとのことでした。

社外チャレンジワークは2016年にスタートしました。その時の届出人数は25名で全体の1.7%。直近の2020年は97名が登録し、全正社員数に占める割合は6.2%までに至っています。部署や年齢による偏りはなく、スタート当初に比べ報酬を得ている人も増えてきているとのこと。また、プライベートの時間だけを認めているので、他社に社員として席を置く例はなく、自己都合で勤務日時を設定しやすい仕事を選んでいるようです。動機は「成長」なので、「新しい知識経験をしたい!人脈を広げたい!」「自分の腕試し!小さい頃の夢実現!」「社会の役に立ちたい!」と言う方々が長続きしているそうです。実施している人からは、「自分の視野と人脈が広がる」「ロートにはない刺激と緊張感(厳しさ)がある」「ロートで働けるありがたさを知った」という声が出ています。

社内ダブルジョブを実施している人からは「キャリアの幅が広がる」「仕事が増えるので段取り力がアップした」「社内人脈が広がった(仕事がしやすくなった)」「元部署の仕事にシナジー効果」「自分の兼務でメンバーが自立した」などのコメントが出ていました。

複業・兼務者はオーバーワーク気味の人が多いのも確かですが、ストレスチェックの結果は意外と低く、逆にイキイキ度合いが高いという結果が出ているそうです。

新たに社外チャレンジワークを実施する社員から生まれた「起業家マインドを育てたい!」という構想は新たなプロジェクトへと発展。①社内公募でロートでの事業化プラン策定、②収支計画を含めてプランのブラッシュアップ、③実行プランを選定、④社内ファンディングで全社で応援、というプロセスが昨年からスタートし、実際に合同会社が設立され事業化が進んでいるものもあります。

また、健康経営を目指す企業であることから、社員の健康を応援する「社内健康通貨(アルコイン)」と言う仕組みがあります。ウォーキング、卒煙達成、健康イベントに参加するなど、日々の健康アクションをする毎にコインが溜まり、健康に役立つモノ・コトに交換できる制度です。例えば「8,000&早歩き20分達成:10コイン/日」、「煙草を吸わない(非喫煙)500コイン/月」などで、溜まったコインは専用サイトで利用できますが、先ほどの社内ファンディングにも使うことが出来ます。総額の10倍を会社が出資して事業を応援しているそうです。

ロート製薬は「一人ひとりが自分に制限をかけず、広く世の中に出て、活躍できる社会にしたい」「そうしないと世界で戦えないのではないか、そのためには、熱意ある人たちを便利使いせず、高い目標や難しい課題に挑戦できる機会の提供をする必要があるのではないか」という創業家の思いから、複業を解禁しています。

会社が目指している社員との関係は”自立(自律)”。依存関係ではなく自立の関係を目指して、自分自身で人生を決めるようにしていきたい。主役は会社ではなく、一人一人の社員。「同質で画一なブロック塀ではなく、石垣をつくるように一人ひとりの個性を活かす企業」がロート製薬の目指す会社と社員の姿だということでした。

最後に、「NEBER SAY NEVER for人生100年時代」、人生100年時代を迎え、30年、50年後も見据えて、社会の役に立つ企業を目指しており、そのための働き方改革であり、健康経営です。という力強いメッセージをいただきました。

山本さま、貴重な事例をお話しいただき、ありがとうございました。

(文責 山岡正子、高久和男)
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