2019年4月12日(金)
第10回「D&I推進チームでリードする3年間のダイバーシティ推進奮闘記!」

 第10回目となるダイバーシティ&インクルージョン研究会は、ゲストとしてさくら情報システム株式会社 人事部人財企画グループ グループ長 薄井昌子さんと同グループ D&I推進チーム チーフアドバイザー 高久和男さんにご登壇いただき、22名の皆様と共に活発な意見交換が行われました。

【第1部】主宰者 植田による事前アンケートの分析結果報告
【第2部】「D&I推進チームでリードする3年間のダイバーシティ推進奮闘記!」

【第1部】主宰者 植田による事前アンケートの分析結果報告(回答数:18社)
アンケートでは、「D&I推進チームでリードする3年間のダイバーシティ推進奮闘記」として各社におけるダイバーシティ推進の現状についてお伺いしました。
「ダイバーシティ推進をリードしていく体制は?」との設問には、人事&人材開発部門がもっとも多く33%、ダイバーシティ推進専門の部署が28%となりました。
 次に「ダイバーシティ推進を率いるリーダーは?」との設問には、小学生・中学生以下の子供がいるワーキングマザー27%、子供のいない既婚女性6%、独身女性6%と回答。ダイバーシティ推進リーダーの約4割が女性という結果となりました。昔はダイバーシティ推進にひとりで取り組んでいる企業が多かったなか、現在はグループで本格的に取り組んでいる企業が増えつつあることが伺えます。
 「ワーキングマザーの管理職は、ここ3年で増えていますか?」との設問には、増えている17%、少し増えている22%と回答。女性の管理職は徐々に増えてきているが、従来の働き方である長時間労働型の独身女性管理職だけでなく、今後はワーキングマザーの管理職が増えていかなければなりません。
「ワーキングマザー(育休明け女性を含め)のキャリア支援に対して施策、サポートを行っていますか」との設問には、行っている17%、少し行っている28%と回答。産休前後の面談や復職者支援研修、復職者上司研修を実施しているという回答があるものの、全体の45%にとどまり、半数以上は実施できていないという結果となりました。
 また「50代はここ3年で増えていますか?」との設問には、増えている72%、少し増えている17%と全体の89%が増えていると回答。また「50歳以上の人を対象とした研修を行っていますか」との設問には、半数以上の61%が実施していないと回答。50歳~55歳は、仕事でもプライベートでも転換期であるため、この節目に50歳以降のキャリアをより幸せなものとするためにもキャリアデザイン研修を行ってみてはどうかと思います。
 最後に「自社のダイバーシティを進めていくうえで、悩んでいることはありますか?」との設問には、ある78%、少しある5%と回答。「ダイバーシティ担当者が通常業務との兼務であり強い推進力を持てない」、「会社の上層部や周囲を、どのように巻き込んでいけばよいのか?」と、どのように進めていくのが良いか、悩んでいる様子が伺えました。

【第2部】「D&I推進チームでリードする3年間のダイバーシティ推進奮闘記!」
 第二部では、さくら情報システム株式会社 人事部人財企画グループ グループ長 薄井昌子さんと同グループ D&I推進チーム チーフアドバイザー 高久和男さんからお話しいただきました。
 薄井さんは、かねてから女性管理職登用の必要性を強く感じられており、「女性社員が活き活き働くと会社の風土が活き活きとし、男性社員も、もっと活き活きする」という想いのもと、2016年7月にダイバーシティ推進室初代室長に就任しました。1年目となる2016年に注力したのは、女性管理職の登用に向けた女性活躍推進の取り組みです。ダイバーシティポータルサイトによる情報発信、育休復帰セミナー開催、女性のコミュニティ作り、メンター制度の実施など、次から次へと施策を実施し社員啓蒙に努めてこられました。ダイバーシティポータルサイトでは、役員に自分の言葉でダイバーシティを語ってもらうことにより、全社的に重要な取り組みであることが周知できたとのこと。また、女性リーダー候補を集めた研修に、社長や会長にも参加いただき、“我が社にはこんなに素敵な女性がいるんですよ”とアピール。しかしながら、女性管理職登用へのハードルは高くジレンマを抱える日々が続いたそうです。それでもあきらめずに、頑張り続けた多くの女性達は、現在、管理職一歩手前のリーダーとしてご活躍中とのことで、確実に一歩一歩前進されている様子が伺えました。
 2年目となる2017年に注力したのは管理職に対するダイバーシティマネジメントの啓蒙と多様な社員を受容するための意識改革でした。“上司である管理職がダイバーシティのマネジメントができないと、悩みながら頑張っている人達が報われない”、薄井さんの言葉には、共に働くメンバーに対する愛があります。介護との両立で悩みながら働いている人達が悩みを吐き出す場を作り、LGBTの方々が感じている働きづらさを理解いただくためのセミナーを開催。そして介護について学んでいただくためにDVDを活用した視聴覚上映会を実施する際には、管理職の方々がメンバーの時間調整するための負荷をかけないよう映画館で映画を見るような柔軟な取り組みを行ったそうです。その結果、この1年半で全社員の70%の方が視聴され、介護に対する情報を得る貴重な機会が創出できました。
 3年目となる2018年には組織改革が行われ、薄井さんは現職である人事部人財企画グループ グループ長に就任、ダイバーシティ推進室はダイバーシティ&インクルージョン推進チーム(以下D&I推進チーム)として吸収され、薄井さんは継続してダイバーシティ推進を牽引されています。D&I推進チームの皆さんは、ワーキンググマザーの方、イクメンの方、障がいをお持ちの方、シニア世代の方など、まさにダイバーシティ。ご紹介いただいたチームの皆さんの活躍ぶりから、個々の力を発揮しながらチーム全体の推進力を高めている様子が伺えました。ダイバーシティ推進のとらえ方は、解釈によって個人差があり、
 一つひとつの取組みを進める度に社員から投げかけられる様々な疑問もあり、今こそD&Iチームだけでなく会社全体でやる時、目標としていた「風通しの良い組織と社員の健康」に立ち返り制度や仕組みからダイバーシティを考えた1年だったそうです。例えば、 “自分達で決める私たちの組織づくり”では、人事から現場へ画一的に目標を投げかけるのではなく、自主的にワークライフバランスや長時間労働を是正するための目標を設定していただく。“週1日は残業しない”、“毎週は無理だけど月1回は残業しない”、“一人一人が宣言して定時退社する”、など各現場それぞれで良く、話し合い合意する。こういったプロセスを経て各現場で取り組むことによって自分達が働きやすい組織作りが実現できるのだと感じました。
 薄井さんの情熱は経営層にもしっかり届いており、先月発行されたダイバーシティレポートVol.2(https://www.sakura-is.co.jp/topics/files/tp-000-475-sis_001.pdf)では、社長に健康経営宣言をしていただくと共に、「組織としてのダイバーシティ&インクルージョン」をトップメッセージとして語っていただいています。「えるぼし」最高位の「段階3」認定、「トモニン」認定、「介護離職防止対策アドバイザー」設置、「がん対策推進企業アクション 推進パートナー企業」登録など、ダイバーシティへの取り組みはホームページでも公開されていらっしゃいます。(https://www.sakura-is.co.jp/corporate/diversity/)
 ダイバーシティの取り組みは、一足飛びには行かず、いろいろな段階を紆余曲折しながら進んでいきます。“意識の変化”“行動の変化”には、個人差があり、同じスピードでは進まない。それが「是」であると受け止めて粘るのが、推進側の成長。いろいろな取り組みをしていても、思うようにならないことはたくさんある。薄井さんが発せられるひとつひとつの言葉や、忙しいけどやりがいがあるとおっしゃった笑顔から、薄井さんの想いが私たちの心にしっかりと届きました。

 高久さんからは中高年を対象としたキャリア研修と制度改革についてお話しいただきました。2013年より45歳の中堅社員の方々を対象としたキャリア研修を実施し、2018年はその1期生が50歳となることもあり新たに50歳研修を実施されました。実施にあたり研修内容を模索する中で、植田が講師を務める「50歳からの幸せなキャリア」を高久さんご自身が受講され、自社の社員にも受けさせたいと感じられ、導入を決定されたそうです。アンケートのコメントからも好評を得ており、今後も発展させながら継続されるとのことでした。
 これまで55歳を機にキャリア職に転向する制度があり、管理職も役職定年となり、一律で収入ダウンとなる「キャリア職制度」が定められていました。制度改革によって、2019年7月より一般職の社員のキャリア職制度は廃止し、管理職階層の社員は制度が残り収入は減るものの、時間外手当を支給し、急激な年収ダウンを回避する制度改定が施行されます。背景には、晩婚化等により、教育費や住宅ローンの負担が50代になっても続くこと、そして、これから数年間は、バブル世代が続々と55歳を迎え、これまでの発展を支えてきた多くのベテラン社員の「働き方」が、企業の「これから」に大きな影響力となる等、55歳以降もモチベーション高く、培ってきたスキル、ノウハウを現業で活かし続けるとともに、若手社員の育成とノウハウ継承を期待しています。単純にお給料が下がらなくて良かったね、だけではなく、これからは若い人達と対等に評価されるという現実もしっかり見つめ、よりモチベーション高く働くことが求められていると感じました。

 参加者からは、「自社ではなかなかダイバーシティ推進の取り組みが進まないが、薄井さんの地道な取り組みのお話を伺い自分ももっと頑張ってみようと思えた。」、「フェーズごとにダイバーシティ推進の取り組みを進めている点が参考になった。」、「50代向けにお金のセミナーはあるが、自身のキャリアを考える機会は作っていない。発表を聞いて、必要なことだと思った。」、「“もっといてほしい50代を増やす”という言葉が印象に残った」など、様々なコメントをいただきました。
薄井さん、高久さん、貴重なお話をありがとうございました。

文責:一般社団法人日本経営協会 村上圭介、キャリアコンサルタント 山岡正子