「ダイバーシティ推進の最先端企業から学ぶ」
~初代委員長&現執行役員の後藤綾子氏が語る「カルビー的ダイバーシティ推進のススメ」

本日は、ゲストとしてカルビー株式会社 執行役員北海道事業本部長 後藤綾子氏にご登壇いただき、24名の皆様と共に活発な意見交換が行われました。
【第1部】主宰者 植田による事前アンケートの分析結果報告
【第2部】「ダイバーシティ推進の最先端企業から学ぶ」
~初代委員長&現執行役員の後藤綾子氏が語る「カルビー的ダイバーシティ推進のススメ」

【第1部】 主宰者 植田による事前アンケートの分析結果報告(回答数:14社)

アンケートでは、各社における女性活躍推進・ダイバーシティ推進の現状についてお伺いしました。女活躍推進法が2016年に施行されましたが、それ以前から取り組んでいる企業が58%、ここ3年以内に取り組みを始めた企業が28%となり、実際に進んだ14%、少し進んだ72%を合わせると86%の方々が変化を実感しています。具体的には、“管理職(昇格)を目指す人材も出てきた”、“女性管理職が増えた”、“女性の基幹職の倍増”など。ワーキングマザーの管理職については、増えた7%、少し増えた40%という回答から、結婚、出産、子育てをしながら活躍する女性が増えつつある現状がわかりました。一方、女性の取締役、執行役員の状況は変わらないとの回答が79%で、そもそもいないという意見が大半を占めていました。60歳以上のシニア雇用は増えた43%、少し増えた36%と79%の企業か増加状況でシニア層を対象としたキャリア研修も実施され始めています。
組織風土については、オールドキャリア(昭和)からダイバーシティ(平成)に変化しつつあるとの回答が79%あり、“能力の高い社員の昇格スピードアップ”、“社内で最での管理職昇格が増加”とのコメントがありました。しかしながら、“昭和的管理職昇格なリーダーシップから抜け出せない”、“昭和体質を変えないことを誇りに思っている”などのコメントもあり個人による意識のバラつきが感じられました。
回答者ご自身に対する質問として「女性活躍推進・ダイバーシティ推進の担当となった期間」と「充実度・満足度」をお伺いしました。期間については、1年以内が22%、2~3年が43%、3年を超える14%、充実度・満足度については、かなりある22%、ややある50%、となりました。1年目で何をやればいいのか試行錯誤し、2~3年目で施策を実行した課題が見えてくる様子がわかりました。“担当する本人がどのような気持ちで取り組んでいるのか、それが一番大切”という植田のコメントに、一同深くうなずく場面となりました。

【第2部】「ダイバーシティ推進の最先端企業から学ぶ」
~初代委員長&現執行役員の後藤綾子氏が語る「カルビー的ダイバーシティ推進のススメ」

今回は講演ゲストとして、カルビー株式会社 執行役員北海道事業本部長 後藤綾子さんにご登壇いただき、ダイバーシティの取り組みを推進されてきた後藤さん御自身の体験を中心にお話し頂きました。ダイバーシティを牽引されてきた過程での抵抗壁を、ある時は強く跳ね返し、ある時は抵抗が強い方々の気持ちに寄り添いながら、進むべき道をぶれずにリードされてきました。
 本題に入る前に、まずカルビー株式会社のコーポレートメッセージ「掘りだそう、自然の力。」と社名の語源「カルシウム+ビタミンB₁」から「カル+B」⇒「カルビー」を紹介下さいました。後藤さんは入社から7年間は営業部署配属、その後の秘書時代は、スケジュール調整などの秘書業務を行いながら、社長のそばにいるからこそ、社長のメッセージを社員に直接伝えたいという想いのもと、CEOメッセージを工夫しながら周知されたというお話を伺いました。また、「Calbee Innovative Field イノベーションを生みだすフィールド=土が良ければ作物は良く育つ。⇒畑の土としてのオフィス、オフィスが良ければ従業員もよく育つ。」他、多くのメッセージを紹介頂くにつれて、私達が知っているカルビーの味わいを思い起こさせて頂きました。更に、「感じ取る[種]⇒混ざり合う[芽]⇒結びつく[花]⇒生みだす[実]。」「掘りだそう、多様性。育てよう私と、Calbee。」等々、同社の社内啓蒙に使用する言葉一つひとつが、幾度もの転機の中で引き継がれていく、後藤さん自身の信念にも繋がっていらっしゃるのではと感じ入りました。
第1の転機:2009年、オフィス改革プロジェクトでは、会長からの「綺麗なオフィスにしてね」の期待に沿うべく、2010年の本社移転に伴い固定机を持たずに仕事をするフリーアドレス制を導入されました。出社時にパソコン上のダーツで席を決め、午後は再び席替えするなど、同社の施策は日経ウーマン他、多くのメディアでも好感度高く紹介されてきました。メリットとして、他部署や役員とのコミュニケーションが活発になる、ペーパーレスや働き方改革の推進に繋がるなどの他、「月1回30分の一斉清掃」の取り組みもご紹介いただきました。フリーアドレスが定着した直近の風景、ということで最近の社内の様子を見せていただきましたが、清潔感あるオフィスの写真には社員一人ひとりの意識の深度が表れていました。
第2の転機:2010年にはダイバーシティ推進委員長として、さらなる牽引力と説得力が発揮されました。2010年はカルビーのダイバーシティ元年。同年4月に全国のグループ会社を横断する15名(女性12名、男性3名)にて委員活動が開始されました。イベント部会、アンケート部会、ハンドブック部会などを通じて社内浸透を図られました。2011年2月には「2017年のダイバーシティが進んだカルビー社を想像(夢を描いてみる)してみよう」をテーマにダイバーシティ委員合宿を実施。6年後の自分の会社を創造力豊かに描き、例えば、“女性の工場長がいる”、“時短勤務者が活躍している”、“多様な働き方を実践している”、“これまでにいないタイプの社員を採用している”、“日本食文化を海外へ輸出している”、“海外で有名なメディアにもカルビーのダイバーシティはすごい!と紹介されている”など。ここで挙げられたいくつかの夢が数年後に実現していることから、夢を描く、ビジョンを共有することの大切さを改めて感じました
女性管理職比率UPについては、ダイバーシティ推進の通過点のひとつ、それすら実行できない会社に素敵な未来は有り得ない。だからこそ、まずは「女性の活躍」を中心に推進する必要性がある、ということを改めて伝えていただきました。ダイバーシティ系セミナーの成功の秘訣も教示下さり、セミナータイトル例としては「明日へつなげる自分のチカラ発見!」講座、AGN(アネゴネットワーク)女性管理職のネットワークなど、少しでも申込みしやすい名称となるように工夫されたそうです。さらに、ダイバーシティ新聞、手作り掲示板、キャッチコピーの三角POPを食堂に置くなど、地道な草の根活動も続けてこられました。ダイバーシティ推進に掛かる費用はコストで無く投資であり、「ライフ」も「ワーク」も“やめられない、とまらない”と、カルビー社らしいメッセージと共に、ダイバーシティは総力戦であること強くメッセージされていました。一人ひとりが持つ多様な能力を120%のチカラとして発揮し、ダイバーシティ推進を加速していく意思は、次の委員長へと伝達されていかれています。直近では2018年11月9日に「Power of Difference 仕事に効く!ダイバーシティ」をテーマに京都でダイバーシティフォーラムが開催されました。
第3の転機:2014年コーポレートコミュニケーション本部長に就任された際に実施した、お客様相談室での取り組みが印象に残りました。企業のさらなる発展のためには、お客様の生の声を知ることが大切、という想いのもと、相談室での対応場面に役員、経営者層の方々が2時間モニタリングをするという施策を実施されました。時に厳しいお叱りの声もありますが、相談室にはご指摘だけでなく応援のメッセージもたくさん届きます。一人ひとりの声に真摯に向き合う姿勢こそが、お客様から支援される理由のひとつだと確信しました。
2017年4月からは執行役員北海道事業本部長に就任、時を同じくしてジャガイモ不足によりポテトチップス商品を休売した“ポテチショック”。カルビー株式会社は、このクライシス(危機)を自社内の課題に留まらせず、地方創生と結び付け戦略的に社外発信を行いました。この取り組みは、「本業に限らず、ダイバーシティや女性活躍といった全企業共通のテーマに対しても高い先見性を社会に提示しリードしている」と高く評価され、2018年9月に企業広報大賞を受賞されたそうです。
北海道事業本部長としての後藤さんのご活躍には、本社とのコネクションや社内力、社外ネットワーク力などの強みが発揮されていらっしゃるようで、その姿を周囲の方に惜しみなく見せることが後進の育成につながっていると感じられました。立ち止まらずに挑み続ける姿勢が肝心、経営者層を巻き込むコツ、何より重要なのは、「ダイバーシティ活動に情熱を持った人が続けていかないと緩む!」と今日この場にいる参加者達も後藤さんの熱意に強く引き込まれていきました。
終盤は質疑応答となり、参加者から「メンター制度」について質問を受け、「いろいろ試してみることが大切。意外だったのは仕事の仕方は男性役員に聞きたいニーズがあり、女性だからメンターは女性が適任とは限らない。」と回答。また、社員の気持ちに響かせる工夫として、「ダイバーシティ推進委員会にはダイバーシティ推進を賛同している人達だけでなく、否定的な人も含めることで、抵抗感ある方々へのアプローチ方法を工夫できる。『現場が主役』で進んできた。」と力強いメッセージで締められました。
なでしこ銘柄5年連続選定、女性が輝く先進企業表彰「内閣総理大臣表彰」、JAPAN WOMAN AWARD2016、女性活躍推進法に基づく優良企業に認定、など数々のタイトルを受賞されてきたカルビー株式会社。ダイバーシティの礎を築いていらした後藤さんは、2019年4月より、執行役員セールス&マーケティングカンパニー東日本営業本部長に就任されるとのことです。これからも更に御活躍されますことを応援させていただきます。ありがとうございました。
文責:キャリアコンサルタント 長島裕子、キャリアコンサルタント 山岡正子